インドや中東にRCSを売り込む

 NTTドコモは日本では加入者数トップではあるが、その数は約6000万と世界的に見れば決して多くはない。世界には億単位の加入者を抱える巨大事業者がひしめいており、NTTドコモは加入者数ではトップ20に入るか入らないかといった規模である。だが、その売上高では世界第4位(2012年1~3月、2012年9月27日のNTTドコモのIR説明会資料による、PDFによる資料)。

 NTTドコモの各種サービス展開はOTT化を進めたい世界の携帯電話事業者にとって理想的なモデルに見えるかもしれない。だが、スマートフォンのデータ通信需要に応えるためのネットワークの展開はこれからという事業者も多く、資金余力のない事業者には簡単にまねできるものではない。

 そうした事業者は独自のマーケットを展開するどころか、メッセージングサービスなどで既にサービス事業の足元をOTTに脅かされている。こうした事業者に対して、レベニューシェア型でRCSを提供するベンダーも登場している。米Telcentrisが提供する「VoxOx」(写真8)はそうしたサービスの一つだ。クラウド型でキャリアグレードの各種RCS関連サービスを提供するとしており、前述の「Joyn」と同等のサービスをAndroidやiOSを搭載するスマートフォン向けに展開できるという(写真9)。

写真8●米Telcentrisが提供するRCS「VoxOx」のサービス例
写真8●米Telcentrisが提供するRCS「VoxOx」のサービス例
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写真9●「VoxOx」と他のサービスの比較
写真9●「VoxOx」と他のサービスの比較
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 同社のCTO兼共同創業者であるKevin Hertz氏(写真10)は、「既にインドや中東の携帯電話事業者と導入に向けた話をしている」と話す。同社は特にターゲットを特定しているわけではないとしているが、こうした新興市場の携帯電話事業者の反応がいいという。

写真10●米TelcentrisのCEO兼共同創業者であるBryan Hertz氏
写真10●米TelcentrisのCTO兼共同創業者であるKevin Hertz氏
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 こうした地域の通信事業者は「OTTの“脅威”に対して何もしなければ売り上げを失ってしまう。IMSベンダーからソリューションを購入するとエンド・ツー・エンドでIMSのインフラが必要になる。サービスを自社開発する場合は継続したR&Dが必要となる。Joynでも同じことができるが真価を発揮できるほど普及するのに何年かかるのだろうか」とHertz氏は述べ、クラウド型で運用コストも低い「VoxOx」がOTT対抗として最適なソリューションだと力説する。