2013年2月25日から28日まで、スペイン・バルセロナで開催された世界最大のモバイル関連の展示会・カンファレンス「Mobile World Congress(MWC)2013」。主催団体であるGSMAの試算によると地元への経済波及効果は3億2000万ユーロ以上、参加者は200カ国以上から7万2000人以上と昨年を8%上回る過去最高を記録した。しかも参加者のうち4300人以上がCEOだという。各国の通信行政にかかわる政府関係者の参加も多い。展示会場はこうした世界のモバイル関係者に自社の製品やサービス、存在感をアピールする絶好の場でもある。

写真1●Mobile World Congress 2013で巨大ブースを構える韓国サムスン電子
写真1●Mobile World Congress 2013で巨大ブースを構える中国ファーウェイ
写真1●Mobile World Congress 2013で巨大ブースを構える韓国サムスン電子と中国ファーウェイ
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 展示会場では、スウェーデン エリクソンやフィンランド ノキアシーメンスネットワークス、仏アルカテル・ルーセント、米クアルコムといった“老舗”の通信機器・デバイスメーカーの巨大ブースがひしめく。一方、韓国サムスン電子、中国ファーウェイ、中国ZTEなど韓国や中国の企業も“老舗”に負けない存在感で多くの来場者を引き付けており(写真1)、これら3社が直近期のスマートフォン出荷台数の世界シェア1位、3位、4位(米IDCの調査)の企業であることをあらためて実感させられる。

Androidのドロイドに代わり、Firefoxのキツネが浸透

 韓国や中国の企業の存在感の大きさは今に始まったことではない。もはやMWCでは当たり前の光景だ。そうした中、2013年のMWCをスマートフォン側から見たとき、全体の雰囲気が2011年、2012年とは明らかに異なる。その理由は米グーグルの不在、そしてAndroidの存在感の“薄さ”だ。もちろん、各メーカーが展示するスマートフォンは圧倒的にAndroid搭載機が多い。

 だが、展示会場を見渡した時、2011年(関連記事:米グーグルがMWCに初の展示ブース出展、最新Android端末が勢ぞろい)、2012年(関連記事:Googleは今年もAndroidコミュニティ支援、日本人開発者も参加)のMWCのように、もはやAndroidは前面に出てきていないのだ。

写真2●巨大なキツネのキャラクターが目立つ米モジラのブース
写真2●巨大なキツネのキャラクターが目立つ米モジラのブース
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 昨年のMWCまでは会場のあちこちで見られたAndroidのキャラクター「ドロイド」も、今年は米インテルなどの一部ブースで見られただけ。グーグルとしては、既にAndroidのプレゼンスは高まったため、MWCで露出を仕掛けるのはもはや不要との判断もあるのだろう。その代わりにジワリと会場に浸透していたのが米モジラの「Firefox OS」、そしてそのキツネのキャラクターだ(写真2)。

 MWC2013の大きな話題の1つは間違いなくFirefox OSである。そしてFirefox OSを軸にすると、MWC2013におけるいくつかの論点があぶり出される。(1)米アップルのiOS、米グーグルのAndroidに次ぐモバイルOS第3勢力の登場、(2)今後新たに新興国などでモバイルネットワークに接続してくる“Next Billions”(次の数十億ユーザー)に向けた取り組み、(3)上位レイヤーサービスを独占する「Over The Top(OTT)」に対する通信事業者側からの回答---である。この特集では第1回から第3回まではこれらのテーマに沿って進めていく。