第6回では、ゲーミフィケーション体験のデザインとして利用者のサイトへの慣れの度合いに応じて対応を変えていくデザイン手法について説明した。慣れの度合いとしては大きく「初心者」「中級者」「上級者」に分け、それぞれに対して適切なゲーミフィケーション体験にどのようなものがあるのかを紹介した。

 今回は応用編第3弾、ユーザーの動機を理解することとその手助けとなるフレームを紹介する。ゲーミフィケーションの成否を分けるのは、ユーザ動機の理解にあるといってもいい。ユーザーの動機にマッチしなければ、どれだけゲーミフィケーションとしてよくできていても失敗に終わる可能性が高くなる。先日ニュースサイト「TechChrunch」に取り上げられた「今のゲーミフィケーションアプリの80%が2014年までにポシャる、という説」という記事はまさにこのことを説明したものと言える。

1段階深いユーザー動機の理解

 筆者は時々「ゲーミフィケーションデザインワークショップ」を開催しているが、その中でもこのユーザー動機の理解は一番最初のワークとして提示している。ここをうまくつかめるかどうかがその後のゲーミフィケーションデザインの良し悪しを大きく分けている。よく例題として出すのが米Amazon.com(Amazon)だ。ユーザー動機の理解のために「Amazonを訪れる人は、なぜAmazonに来ると思いますか?」という問いを最初に投げかけて、しばらく考えてもらうというワークを実施する。

 おおよそその際の回答としては「便利だから」「安いから」といったものが多くを占める。最初のワークはこのマインドセットを変えるところから始める。ゲーミフィケーションデザインを成功させるためにはユーザーの動機の理解としては、もう1段階深いところのものをつかむ必要がある。

ユーザーの真の動機をつかむことが大切

 仮に本を買うとして、そのユーザーがAmazonを訪れるのはどうしてだろうか。もちろん「便利だから」「安いから」という回答が間違っているわけではない。ただ、そもそも(サイト自体の)利便性や安価であることは本を買う主体的な理由にはならない。本を買うことで得たいものは他にあるはずである。例えば「仕事で必要な知識を得たい」「なにかのスキルを高めたい」「教養を深めたい」などである。

 こうした欲求があって初めて「本を買おう」という選択に至る。本を買おうと思った段階で次に「どうせ買うなら便利なところ、安いところにしよう」と考える、という順序でユーザーは思考している。ゲーミフィケーションデザインを成功させるためにはこの欲求、真の動機をつかむところが大切だ。

 面白いことに、この真の動機自体は必ずしもユーザー本人が言語化できるわけではない。ワークショップでの最初の問いである「なぜAmazonを訪れると思いますか?」を投げかけている参加者は、ほぼAmazonの利用者でもあるが、真の動機が言葉として出てこないことが多い。あまりにも当たり前だからというのもあるが、意外に自分でも気づいていないこともある。これは、単純なユーザーへのインタビューでは吸い上げられない可能性があるということを示唆している。それだけ自分たちのユーザーへの深い洞察・理解が必要になるということだ。