日本のIT企業にとって、海外進出は待ったなしだ。国内市場の拡大が見込めないうえ、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)といったアジアのIT企業が日本進出を加速させている。

 日本のIT企業は、いかにグローバル化に取り組むべきか。日本企業のグローバル化の推進を目的として2009年に活動を始めた情報サービス産業協会(JISA)の「グローバルビジネス部会」のメンバーであるNTTデータの西島昭佳エンタープライズITサービスカンパニー第四法人事業本部副事業本部長、シーエーシーの大須賀正之執行役員事業改革施策担当、網屋の伊藤整一社長が議論した。

(聞き手は大和田 尚孝、岡部 一詩=日経コンピュータ

日本のIT企業が海外に進出するにあたって、強みは何でしょうか?

NTTデータの西島昭佳エンタープライズITサービスカンパニー第四法人事業本部副事業本部長
NTTデータの西島昭佳エンタープライズITサービスカンパニー第四法人事業本部副事業本部長

西島:そこが最も肝心なところです。海外進出に際しては、日本のIT企業の強みを改めて確認する必要があります。強みがわからないまま、ただ単純に市場を求めて海外に出て行っても、うまくいきません。

 強みを知るにあたっては、日本の製造業が見本になります。例えばユニクロの品質管理の仕組みは、ベストプラクティスの一つだと思います。中国などで製造しつつも日本品質を確保し、しかも安く提供する形です。

 当社(NTTデータ)のような大手システムインテグレーター(SIer)にとって、製品とはプロジェクトマネジメント力に相当すると思います。ただし、この力自体をグローバルで売っていくのは難しい。そこでこだわりたいのが「方法論」の構築です。日本で培ったプロジェクトマネジメントに関する暗黙知などを形式化して、インドや中国といった新興国の拠点に展開していく手法です。

 「方法論」を作ると言うと一部の大手だけに関係する話に聞こえますが、中堅・中小のIT企業にも、それを実現する要素はあると思います。

中小IT企業にもチャンスはある

大須賀:グローバル化というと大手IT企業しかチャレンジできないことのように思われているかもしれませんが、実はそうではなく、特徴的なソフトなどを持つ中小IT企業にも十分にチャンスはあると思います。もちろん販売チャネルなどの課題はありますが。

 そう考えると、実は受託開発を中心に手掛けてきた中堅のSIerが、最も変わる必要があるのかもしれません。

 私は20年以上前に前職で米国ニューヨークに駐在していたのですが、そのときから米国では既に、中国やインドでオフショア開発をするIT企業がありました。このビジネスモデルは、ベトナムやミャンマーといった地域に開発拠点を移しながら、今も脈々と受け継がれています。ただしこのビジネスモデルは単純に考えるといつか限界がくる。