UX重視の開発を成功させる三つめの原則は、ユーザーの感情を動かし、動機付けするための工夫を盛り込むことだ。システムの利用率を高め、継続して使ってもらうのが狙いである。
娯楽や競争といったゲームの要素をシステムに取り込むゲーミフィケーションや、システムに愛着を持ってもらうためのキャラクターの活用などを通じ、ユーザーとシステムとの接点を強める。アパレル会社の「せーの」、モスフードサービス、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)はどのように進めたのか。
モノ売りだけの店舗では限界
服の掛かったハンガーを取り上げると、同じ服を着たモデルがディスプレイに現れる─そんな服飾店用サイネージシステム「チームラボハンガー」を導入したのが、10~20代の男性をターゲットにしたファッションブランド「VANQUISH」を展開するせーのである(図1)。
新システムを導入したのは、ECサイトの台頭に対する危機感がきっかけだった。「ただモノを買うだけなら、ECサイトのほうがよほど便利。モノを売るだけの店舗では生き残れない」と石川社長は話す。
ディズニーランドのように、店舗に何度も来たくなるという体験を実現できないか。そう考えた石川社長が、友人でチームラボ社長の猪子寿之氏の勧めで導入したのが、チームラボハンガーだった。
このシステムの鍵を握るのは、センサー付きハンガーだ。服が掛かったハンガーを客が取り上げると、ハンガー内のセンサーが感知して、無線で通知。すると、近くに設置したディスプレーから、ハンガーの服に対応した動画や音楽が流れる。「客に何かの行為を強いるのではなく、客の自然な行動をトリガーにシステムを動かすことを考えた」と、チームラボの中村洋太マーケティングディレクターは開発の狙いを語る。