大手IT企業の採用担当者に、ソフトウエアエンジニアに求められるスキルセットや具体的な採用プロセス、選考のポイントなどを聞くシリーズインタビュー。ドワンゴ 執行役員 ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部長 千野 裕司氏とニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部 エンジニアリングサポート室 清水 俊博氏は、「ユーザーとの「近い距離感」を楽しめるエンジニアであってほしい」と語る。

(聞き手は田島 篤=出版局)


ドワンゴにおけるソフトウエアエンジニアの役割から教えてください。

(左が千野氏、右が清水氏)

清水氏 まず、インフラ系のエンジニアとアプリケーション系のエンジニアに大別できます。前者は、サーバーの調達からラックへの取り付け、ネットワークの構築、配線までを実際に手を動かして行います。加えて、おおよそのセットアップや必要なミドルウエアのインストール、基本設定なども行います。

 その上で動くアプリケーションについては、後者のアプリケーションエンジニアが開発します。このような切り分けになっているため、プログラミングはアプリケーションエンジニアが担当します。

 ちなみにドワンゴグループでのインフラエンジニアとアプリケーションエンジニアの大まかな比率は、1対9です。圧倒的にアプリケーションエンジニアが多くなっています。ただ、採用に関しては両者同じくらいに力を入れていきたいと考えています。

では、アプリケーションエンジニアの採用手順を教えてください。

清水氏 ドワンゴのホームページを中心にエンジニアの求人情報を多数公開しています。応募していただいたら、まずは書類選考を行います。書類選考を通過した候補者にはWebテストの実施後、一次面接を行います。Webテストは一次面接の参考情報として使用するためのもので、Webテストで落ちる人はいません。そして一次面接後、二次面接、場合によっては一気に最終面接に進みます。

それぞれの内容を教えてください。まずは書類選考から。

清水氏 例えば、ドワンゴのホームページ経由の場合は、基本的な情報をWeb上のフォームから登録していただき、併せて履歴書と職務経歴書の提出をお願いしています。これらはデータまたは郵送でお送りいただいています。最近はデータで送っていただくことが多いですね。このほか、ご自身をアピールする資料があれば、自由に提出していただいています。

 アピール資料については、ご自身で書かれたコードや作成したアプリケーションを見せていただくのが一番ですが、職務経歴書にプラスアルファした内容のものや、ニコニコ動画にこんなサービスや機能を加えたら良いのではないかというような企画案をいただいたりすることもあります。

選考する場合のポイントは何ですか。

千野氏 書類選考と面接を通して、基本的にはコードを書けるか否かを審査します。エンジニアにはいろいろな区分があって、コードを書く人もいれば、マネジメントをする人もいます。ドワンゴのエンジニアには、いわゆるプログラマ、リーダー、マネージャといった区分を問わず、コードを書けない人はいらないというのが大原則です。

 書類を読んだときに、全然コードを書いておらず調整をしているだけのように思える候補者に対しては、どの程度コードを書けるかが確認ポイントになります。SIerの方だと立場上あるいは年齢上、コードを書かなくなっていることもあると思います。そのように業務でコードを書かなくなっている場合でも、プライベートでコードを書いているような人が望ましいです。

 書類の書き方にも注意していただければと思います。例えば、いわゆる職務経歴書に、何年何月から何年何月まで、「こういう名称の案件で詳細設計、またはコーディングやテストなどを担当しました」、あるいは「20人のチームでサブリーダーを務めました」などと書いてある場合があります。これだけだとどのような貢献をされたのか、実際にコードを書けるのかはなかなか分かりません。案件名の羅列だけではなく、そこで具体的に何をされたのかをアピールしてほしいです。

 また、読み手がどのような情報を欲しがっているのか、どのような意図を持って書類を出してほしいのかをくみ取って書いてくれる人材だとありがたいですね。ちょっと厳しいことを言えば、ドキュメントを書くというのはそういうことだと思います。プロジェクトを後任者に引き継ぐ際のドキュメントをまとめるときであっても、読み手の立場で考える必要があります。そのため、書類選考の段階で、読み手の立場を意識しているかについても、ある程度は考慮します。

清水氏 続くWebテストは学力テストと性格適性検査です。一般的なSPI(Synthetic Personality Inventory)なので、自宅で受験できます。