大手IT企業の採用担当者に、ソフトウエアエンジニアに求められるスキルセットや具体的な採用プロセス、選考のポイントなどを聞くシリーズインタビュー。日本マイクロソフト 人事担当 採用グループ シニア スタッフィングコンサルタント 普久原 朝親氏は、「クールなことをやっていて、とても格好いい開発部隊にぜひとも挑戦してほしい」と語る。

(聞き手は田島 篤=出版局)


日本のマイクロソフトにいるソフトウエアエンジニアの役割から教えてください。

 一般的なプログラマということでは、我々の区分としてはマイクロソフト ディベロップメントにいる開発部隊約200名が相当します。この開発部隊は大きく分けて3グループで構成します。

 一つは、ワード、エクセル、パワーポイントなどのオフィスソフトを開発している部隊。もう一つは日本語入力システムであるIMEを開発している部隊。そして最後が検索サービスBingの開発部隊です。

 これら三つの部隊それぞれにさまざまな職種があります。プログラミング関連ということでは、本当にごりごりとプログラミングをする「SDE(ソフトウエアデベロップメントエンジニア)」、テストを担当する「SDET(ソフトウエアデベロップメントエンジニア・イン・テスト)」、そして開発をマネジメントする「PM(プロジェクトマネージャ)」の3職種です。主にプログラミングをする職種というのは、SDEになります。

 マイクロソフトでは、こうしたエンジニアが自分でキャリアを築いていける環境にあります。例えば、私がいずれかの部門の開発部隊で仕事をしているとします。そこから、米マイクロソフトの開発部隊に行くパスが用意されています。本国あるいは別の国でもよいですけれども、日本以外の開発部隊に行きたいと思ったら、手を上げて、社内面接を受けて、それを通れば異動することが可能です。

 このようにして空いたポジションには補充が必要です。補充は、内部からもあれば、外部からもあります。すべての機会は、内部と外部の両方にあります。そこで、外部からも優秀な人材を求めているわけです。

必要なのは、技術と情熱と英語

SDEとして求める人材像はどのようなものですか。

 基本的に我々が見ているところは、大きく分けて2点あります。

 一つが技術力です。どのレベルの技術力かというと、「SIerでシステムを作っていました」というようなレベルでは残念ながらありません。我々が求めているのはまず、「ソフトウエアベンダーで、ソフトウエア自体の開発をしていました」といった人材です。システムの構築をされている方は結構いらっしゃいます。ソフトウエアを使ってシステムを構築するというのは、もちろん、いろいろな会社が手掛けられています。それが開発エンジニアとして一般的かもしれません。ただ、我々が求めている開発エンジニアは、元となるソフトウエアそのものを作っている人材なのです。

 例えば、ワードやエクセルのようなソフトウエア製品を作り上げる。それができるエンジニアというと、「これぐらいの規模でサーバーを立ててシステムを運用していました」というのとは違います。ごりごりとコーディングをする、例えばセキュリティベンダーであれば「セキュリティソフトウエアを作っていました」とか、企業システムだったら「ERP(基幹業務システム)のソフトウエアを作っていました」とか、世に出るソフトウエアをきちんと作れるレベルの技術力を求めています。

 もう一つが情熱です。モノづくりに対する情熱、例えば、ソフトウエアの使いやすさとして、こういう機能を盛り込むと良いのではないかと考え、それを実現できる情熱が必要です。

英語力は必要ですか。

 読み書き会話ができる英語力が必要です。逆にいえば、日本語ができない方でも全然問題ありません。

 マイクロソフト ディベロップメントで働くというのは、シアトルや東京といった地域の区別は事実上ないと考えてください。中国でもインドでも開発をしており、これらの開発拠点のエンジニアとどうやってコミュニケーションを図るかというと、当然ながら英語を使います。日本語が入ってくる余地はないわけです。だから、「日本語は全くできません」という外国人であってもマイクロソフト ディベロップメントの採用試験を受ける資格はあります。もちろん、日本で生活をするのでしたら、日本語ができた方が便利でしょう。しかしながら、開発者として必須というわけではありません。

 つまり、日本での採用であっても“日本で”ということが重視されるわけではありません。国籍を問わずに優秀な方であれば、「どの国からでも来てください。ちなみに開発拠点は日本にもあります」というスタンスです。

 日本人の方にはもちろん日本語で面接をします。その際に英語のチェックは相当実施します。仕事上、英語力は確実に必要だからです。