大手IT企業の採用担当者に、ソフトウエアエンジニアに求められるスキルセットや具体的な採用プロセス、選考のポイントなどを聞くシリーズインタビュー。グーグル リクルーティング マネージャー茅根 哲也氏は、「求めるのは自分で考えて動ける人」と語る。

(聞き手は田島 篤=出版局)


新規採用はどのように行うのでしょうか。

 新卒採用あるいは中途採用というかたちで人材を通年採用しています。ただ、マインドとしては、採用するときも入った後も、「あなたは新卒ですね」とか「中途ですね」という区別は全くないです。というのは、たとえ新卒で入ってくる場合にも、プログラミングのスキル、コンピュータサイエンスの知識、開発の経験などは既に身に付けていることが前提になるからです。

 採用人数は年によって変わりますが、ソフトウエアエンジニアは新たなプロダクトやサービスを創造する人たちですので、プロジェクトで新たな人材の募集があれば採用しますし、無くてもすぐに大きなインパクトを与えられそうな、とてつもない逸材であれば枠を作ってでも採用します。

 ここでいう「開発の経験」は、職務経験のみを意味するわけではありません。あくまで開発の経験なので、例えば個人のプロジェクトとしてアプリケーションを開発している、あるいはオープンソースソフトウエア(OSS)の開発に参加している、というのでもよいです。例えば学校のコンピュータ科学の授業のほかにもアルバイトでソフトウエア開発をしていました、という経験でも構いません。

「問題を見つけるだけではなく解決する人」

採用にあたって、Googleが求める人材像を教えてください。

 人材像を説明するために、Googleがどのような会社なのか、その特徴を説明しましょう。

 1つは、非常に自由な会社でいろいろな挑戦ができることです。これを逆に捉えると、1から10まであれをやってください、これをやってくださいと命じる会社ではありません。なので、「自分で考えて動ける人」であることは非常に重要です。

 もう1つは、オプティミスティック(optimistic=楽観的)にコンピュータとか、インターネットの可能性を信じていて、それを活かして世の中の何千万、何億という人々に貢献したいという気持ちがあることです。応募してもらう人に、たくさんのユーザーに使ってもらえるものを作りたいとか、それによって世の中に貢献したいとか、そういう気持ちがあることは大事です。

 あと、これも非常に重要な点ですが、優秀なエンジニアたちと高いレベルの仕事をしたいという人が入ってくる気がします。さらに、問題を見つけるだけではなく、手を動かして解決していく人が求められます。

 イノベーションを生み出すには、いろいろな人が自由闊達(かったつ)に議論できることが大切になります。1人で行う作業も当然ありますが、きちんとチームプレーができる人に来てもらいたいと考えています。それは、いわゆる絵に描いたようなリーダーという意味ではなく、コミュニケーションをしっかりとって、議論などを通じて建設的に新しいものを一緒に作れる人という意味でのリーダーです。

スキルだけではないということですね。

 そうです。スキルだけでもないですし、志(こころざし)だけでもダメです。高いスキルと志の両方が必要です。もしかしたら二つは関連することなのかもしれないですね。志が高いからスキルが上がってくるのかもしれないとも思います。

 スキルセットに限っていうと、理想はコンピュータサイエンス学科で学ばれた人です。ただ、こういうと誤解されるかもしれませんので補足しますが、コンピュータサイエンス学科で修士をとっていないとエンジニアとしてGoogleに入れないわけではありません。物理学科の方もいますし、極端な例でいうと大学に入らないで来る方もいます。ただ、そうした場合でも相応のプログラミングのスキルとコンピュータサイエンスの知識があることが前提になります。結果として、コンピュータに関連する学科の修士以上で入ってくる方が多いです。

日本のGoogleならではの特徴はありますか。

 採用に関してはありません。世界中のいずれの拠点においてもGoogleなので、面接手順や基本的なフィロソフィ(哲学)は、世界共通です。求める人材も、世界で統一された基準で見ています。これを我々は「ワングーグル」と表現しています。ただ、開発においては日本にいるからこそ気付く点もあり、東京で考えられたことが世界中のプロダクトに影響を与えることは少なくありません。