写真●Windows 8ではネットワーク接続に対して従量制の課金で接続しているかどうかを設定できる
写真●Windows 8ではネットワーク接続に対して従量制の課金で接続しているかどうかを設定できる
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 Windows 8には、ネットワークが従量課金かどうかを判別し、従量課金の場合は緊急を要さない通信トラフィックについては抑制する機能が備わっている。これによって、たとえばスマートフォンのテザリングを使って通信しているようなときに、知らない間に大量の通信を行ってしまうことを回避することができる。

 定額ではなく、通信した容量ごとに青天井で課金されていく料金システムの場合はもちろん、現在の多くの移動体通信事業者が採用しているように、ある程度の上限を超えると帯域制限を受けるような回線を使っている場合でも重宝するはずだ。

 ただ、その恩恵を受けるには、特にクラシックなデスクトップ環境向けのアプリケーションでは、そのための実装が個別に必要だ。たとえば、Microsoftが無償で提供するデスクトップ版のSkyDriveアプリを使うと、クラウド側とローカルストレージ側のフォルダを自動同期してくれる。だが、従量制ネットワークに接続されている場合でも、その旨をトースト通知で教えてはくれるだけで、同期の通信をやめようとはしない。通信したくない場合は、自分でアプリを終了する必要がある。

従量制のネットワークで通信するかどうかはOSで管理できない

 もちろん、従量制であろうがあるまいが、必要な通信は継続して行ってほしいというニーズはあるだろう。でも、従量制ネットワークを認識する機能を持ちながら、そこでの通信をするかしないかを設定しておくオプションが用意していないというのは間抜けな仕様だ。通信をさせたくない場合は、SkyDriveを終了するしかないというのは情けない。インテリジェントにネットワークを識別して、シームレスに挙動を変えるくらいのことはできてしかるべきだ。

 実際に、新しいOfficeのOutlook 2013は、同様に従量制ネットワーク接続時の警告をしてくれるだけでなく、自動的にオフラインモードに移行してくれる。そして、接続ボタンのクリックで元通りオンライン状態に移行する。これは便利だ。「やればできるじゃないか」という感じで、ここでもOutlook 2013はよくできている。

 そんなわけで、一部のアプリをのぞき、従量制ネットワーク接続時の通信抑制は、Modern UIアプリの更新やデバイスドライバのダウンロード時にしか役に立たないのが現状だ。この機能については、アプリごとに実装するのではなく、OS側でまとめて面倒をみてくれて、ホワイトリストを登録するような形式にできなかったものだろうか。こうした細かいところの配慮が、少しずつ解決していくように、頻繁なOSの更新を期待したいものだ。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
フリーランスライター
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei