写真●「インターナショナル・オープンデータ・デイ」の作業風景(2013年2月23日、横浜市)
写真●「インターナショナル・オープンデータ・デイ」の作業風景(2013年2月23日、横浜市)
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 行政機関や企業が内部で保有・蓄積するデータを外部に開示し、新たな事業創造や社会問題の解決に役立てる「オープンデータ」の動きが広がっている。

 行政が持つ各種統計や医療・社会保障に関するデータ、気象や交通などの観測データをうまく組み合わせれば、企業が取り組む「ビッグデータ」活用にも弾みがつく。

 2013年2月23日には、民間有志を中心に世界で一斉に「インターナショナル・オープンデータ・デイ」が始まった(写真関連記事)。世界105都市、日本では横浜市、名古屋市、福井県鯖江市など8都市が参加している。横浜市では、地方自治体が保有する観光関連のデータを生かしたアプリケーション・サービスのアイデアなどを話し合った。

 地方自治体のほか、中央政府も積極的にオープンデータを推進する姿勢を示している。政府IT戦略本部は民主党を中心とした前政権期の2012年7月に「電子行政オープンデータ戦略」を策定(関連記事)。安倍晋三政権発足後も推進姿勢に変わりはない。1月29日に民間企業のCIO(最高情報責任者)を前に講演した遠藤紘一政府CIOは、オープンデータ推進に対する強い意欲を語った(関連記事)。

データで“縦割り”を打破できるか?

 もっとも、オープンデータの取り組みはまだ始まったばかりで、課題も山積している。日本の行政機関では、外部に開示してすぐに活用できるようなフォーマットで電子データを管理していないケースが多い。

 行政情報開示に消極的な姿勢も根強い。データに「省庁の壁」「自治体の壁」などは存在しないはず。だが、現状では各省庁や各自治体が独自にオープンデータ関連政策を打ち出しており、データの世界でも“縦割り”の構造が温存されそうな気配もある。

 個人情報保護やプライバシーとどう折り合いを付けるかも重要な論点だ。統計的に処理したり集計済みのデータだけを開示するのでは、深い分析の元データとして利用するには不十分である。かといって、住所・氏名などを削除処理しても、医療や社会保障の生データを不適切な形で開示されればプライバシー侵害につながるリスクがある。このあたりの課題や法規制に関する議論もまだ未成熟の段階だ。

 しかしながら、政府が国策として「オープンデータ」を掲げ、ビッグデータ分析に関わる様々な技術が実用段階に達している状況では、オープンデータを官民で幅広く活用する動き自体が後退することはないだろう。ITproでは今後も制度化の動きや活用事例を継続的に報道していきたい。

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