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 “多品種大量”なデータをいかに上手に活用し、企業競争力を高めるか。企業は既存の情報インフラを見直す必要に迫られている。

 既に掲載した「活用事例編」において、さまざまな活用事例を見てきた。だが現実には、企業がビッグデータを賢明に利活用しようと思っても、自前でIT(情報技術)システムを構築するとなると、膨大な手間とコストがかかる。ビッグデータ成功のカギは、IT企業の製品・サービスを上手に活用できるかにある。

 自社が目的とするITシステムを導入するには、どのIT企業と手を組むのが得策なのか。NECや日立製作所、富士通、日本ヒューレット・パッカード(HP)、日本IBMといった大手IT各社のビッグデータに関するソリューション(課題解決策)の最新動向を見てみよう。

顔画像データを販売強化に生かす

図1●NECのビッグデータ事業の概要
図●NECのビッグデータ事業の概要
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 「独自開発した顔検出・照合エンジン『Neo-Face』は、米国国立標準技術研究所(NIST)で1位を獲得したほどの優れたもの。このように自社の得意分野を生かして、ビッグデータ事業の分野で競合と差異化を図っていく」。NECの荒井匡彦プラットフォームマーケティング戦略本部シニアマネージャーはこう言い切る。

 NECは2012年11月、ビッグデータ事業の強化策として、様々なデータ分析サービスをクラウドサービス形式で順次提供することを発表した()。その第1弾が、NeoFaceを生かした「顔認証技術活用マーケティングサービス」だ。(関連記事

 同サービスは、店舗に設置したカメラで撮影した来店客の顔画像データから、性別・年齢を推定し、過去に来店したことのある顧客かどうかを自動的に判別するもの。年代別の来店者状況やリピート率などを算出したり、それらと売上高との相関関係を分析したりして、店舗での販売強化策の立案に役立てる。顧客企業は自前でシステムを構築する必要はない。同サービスをクラウド形式で利用できる。月額利用料金は7万円からだ。

 今後もNECは、顔認証技術を活用したサービスを追加する。2013年1月には「不審者監視セキュリティサービス」を開始。事前に登録してある不審者の顔画像に基づいて、監視カメラなどで撮影した映像データの中から、同一人物を検索・検出できる。(関連記事

 店舗で万引き常習者を発見したら、警備員が所持する携帯情報端末に通知して、不審な行動を取らないかどうか監視させることが可能だ。大型ショッピングセンターやビル管理などでの利用を想定しているサービスである。

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