GPS(全地球測位システム)を内蔵したモバイル端末の普及で、人の動きが可視化できるようになった。小売業などで顧客の動きを分析する新たなマーケティング手法、業務効率化のツールとして活用が広がる。

 GIS(地理情報システム)は鉄道や電力などのインフラ管理や自治体の災害対策に利用するのが一般的だった。これからは企業が持つ膨大なデータと組み合わせることで新たな商機が生まれる。

 「従来の商圏分析は限界に来ている。ビッグデータを使った位置情報分析でこれを打ち破る」

 電通コミュニケーション・デザイン・センター次世代コミュニケーション開発部の中嶋文彦部長はこう断言する。電通がゼンリンデータコム、シンクエージェントと共同で2012年10月から開始したのは「Draffic(ドラフィック)」。70万人の位置情報を収集し、街を行く実際の人間の動線を分析するサービスだ。(サービス開始時の記事:電通が位置情報分析サービスに参入、70万人分のGPSデータ基に人の流れ可視化

 電通は小売業など、依頼を受けた企業に対してこのシステムを使った商圏分析を提供。数十万円程度から利用できる。

70万人分の位置データを可視化

 70万人の位置データはNTTドコモの「オートGPS」機能から得たもの。GPS(全地球測位システム)を内蔵したNTTドコモの一部の携帯、スマートフォン(高機能携帯電話)を所持している人の動きが分かる。現在の動きだけではなく、過去の動きについても3年分のデータがあるため、特定の日や時期にさかのぼって人の動きを分析することも可能だ。

 ドラフィックは50メートル四方(2500平方メートル)までエリアを絞って位置を特定するため、個別の商業施設や大型店舗などへの人の流れを分析することができる。具体的にはどう使うのか。

 を見てほしい。東京・新宿駅の近くに住む人(左)とやや離れた場所に住む人(右)の週末の動きを実際に分析したものだ。両者を比較すると、駅の近くに住む人の方が活発に外出していることや目的地の違いが分かる。

図●電通、ゼンリンデータコム、シンクエージェントが共同で始めた「Draffi c(ドラフィック)」。2地点の人の動きを比較
図●電通、ゼンリンデータコム、シンクエージェントが共同で始めた「Draffi c(ドラフィック)」。2地点の人の動きを比較
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