第1回で、従来のVLAN(仮想LAN)の欠点を解消する新たなネットワーク仮想化技術が登場してきたことを紹介した。新技術は、大きく「オーバーレイ方式」と「ホップ・バイ・ホップ方式」に分かれる。今回は、オーバーレイ方式を説明する。

 オーバーレイ方式は、ハイパーバイザーに組み込んだ仮想スイッチを使用する(図2)。まず仮想スイッチを使ってVLANのような仮想的なLANを構成し、仮想マシンが所属するネットワークのセグメントを分離する。さらに、レイヤー2(L2)のイーサネットフレームをレイヤー3(L3)のIPパケットにカプセル化するトンネル通信を仮想スイッチ間で行うことで、仮想的なLANの範囲を異なる物理サーバーの間に広げる。

図2●オーバーレイ方式のネットワーク仮想化
仮想スイッチとトンネル通信を使って、仮想ネットワークを実現する。(編集注:ストラトスフィアの管理ソフト「Stratosphere SDN Platform」は2012年10月に発売された)
図2●オーバーレイ方式のネットワーク仮想化<br>仮想スイッチとトンネル通信を使って、仮想ネットワークを実現する。(編集注:ストラトスフィアの管理ソフト「Stratosphere SDN Platform」は2012年10月に発売された)
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 仮想スイッチ間の物理ネットワークは、通常のTCP/IPネットワークでよい。既存のネットワークの上に、仮想的なLANをかぶせて作る方式であるため、オーバーレイ方式と呼ばれる。

 オーバーレイ方式のメリットは、新しいネットワーク機器を購入したり、既存のネットワーク機器の設定を変更したりしなくて済む点だ。仮想スイッチの管理用ソフトを用意して、複数の仮想スイッチを一元管理し、トンネル通信などを設定する。

 現在、三つの勢力が、オーバーレイ方式の規格をそれぞれ標準化団体に提案すると共に、規格に対応した仮想スイッチや管理ソフトの製品化を進めている。米シスコシステムズや米ヴイエムウェアなどが提案する「VXLAN」、マイクロソフトなどが提案する「NVGRE」、2012年7月にヴイエムウェアが12億6000万ドルで買収すると発表したベンチャー企業である米ニシラが単独で提案する「STT」だ。

 このほか、既存のVPN(仮想私設網)用トンネル通信技術である「GRE」を使って、独自のオーバーレイ方式を実装しているベンチャー企業もある。