中古車情報検索サイト「オークネット.jp」を運営するオークネットは2012年11月、スマホ専用サイトを構築した(写真1)。HTML5を使って、滑らかな動きと直感的な操作性を実現している。このサイトを作成したのは、日系企業向けのオフショア会社アイティテラフィリピンの技術者たちだ。オークネットはアイティテラフィリピンの社内に自社専用の開発チーム「Laboratory V」を設け、HTML5などに精通した技術者を8人確保している。

写真1●「Laboratory V」が開発したスマホ向けサイト(左)と開発現場の様子
写真1●「Laboratory V」が開発したスマホ向けサイト(左)と開発現場の様子
HTML5を使って、中古車情報検索サイト「オークネット.jp」のスマホ向けのデザインなどを担当した
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 オークネットは新規に構築するシステムのうち、自社の競争力に直結する画面デザインなどを全てLaboratory Vに委託している。Laboratory Vは2012年7月の営業開始から半年間で既に30以上のアプリケーションを構築した。「働きぶりは予想を上回る。1年後には人員を倍増させたい」とオークネットの鈴木廣太郎常務執行役員は話す。当初はLaboratory Vに続きインドやミャンマーにも開発拠点を設ける考えだったが、その計画は一旦取り止め、フィリピン拠点の拡充に集中する。

 鈴木常務はLaboratory Vの技術力について次のように評価する。「HTML5などの新技術は仕様がどんどん変わる。そのほとんどが米国発の英語のドキュメントだ。Laboratory Vのメンバーはそれらを読み込むなど、最新の仕様やルールについて常に情報収集している」。しかもLaboratory Vのフィリピン人技術者の人件費は「日本のおよそ5分の1程度だ」(鈴木常務)。

 Laboratory VはOSS(オープンソースソフトウエア)の最新事情にも詳しいという。オークネットは過去に「ADempiere」というOSSのERP(統合基幹業務システム)ソフトを使おうとした際、参考にした日本のOSSコミュニティーの情報が古くて、導入できないことがあった。ところが、Laboratory VはADempiereを問題なく稼働させていた。フィリピンの技術者が米国のコミュニティーの情報を直接調べて最新情報を入手していたのだ。

 日本向けオフショア企業の老舗である月電グローバルソリューションズの半澤次郎会長も、「フィリピンの技術者は新しいもの好きだ」と述べる。

 同社は技術力のアピールを目的に、ビデオ通話機能やプレゼンス機能を持つAndroidアプリ「VO-FONE」をフィリピンの技術者5人で開発した。VO-FONEはモバイルキャリアなどが提唱する国際的な通信フレームワークである「RCS(rich communication suite)」に準拠する必要があった。そこでRCSの中心的な推進企業であるフランステレコムグループなどと直接対話しながら、1年で構築したという。