人気の日本語入力システム「Mozc」。「Google日本語入力」のオープンソースソフトウエア(OSS)版だ。開発チームの中心メンバーは著名なOSSの日本語処理システムの開発に携わってきた技術者たち。OSSとして公開するのは自然なことだったと語る。

(聞き手は高橋 信頼=ITpro


小松 弘幸氏と工藤 拓氏

小松氏:Google日本語入力は、我々2人の「20%プロジェクト」として始まりました。勤務時間の20%を、現在の業務とは別の研究開発に充てられるGoogleの制度です。僕は学生の時、PRIMEと呼ぶ予測入力方式の日本語入力システムをOSSとして公開していました。

工藤氏:私も学生時代、「MeCab」という形態素解析システムをOSSで公開していました。Google日本語入力の開発を始める前、私は、Google検索の「もしかして」機能を開発していて、誤入力から正しい言葉を推定する機能などが変換効率の向上に応用できると思いました。2人の技術と、Googleの資源を合わせれば、使いやすい日本語入力ができるのではないかと考えました。

小松氏:最初は2人の20%プロジェクトでしたが、協力してくれる人たちが増えてきました。「Anthy」など日本語入力システムを開発していた技術者も参加してくれました。

工藤氏:最初に作ったのはLinux版です。私自身も普段Linuxで開発しています。UbuntuのGoogle版「Goobuntu」を使っています。
 かかわった人をすべて数えると50人近くになるかもしれません。最初は少人数で始めたプロジェクトに、多くの人が集まってきてくれて、という成長の仕方は、OSSプロジェクトに似ているように思います。

小松氏:ただし、徹底してユーザーを重視しました。技術者は、ついどんどん新しい機能を作ってしまうことが多いのですが、上司の及川卓也エンジニアリングマネジャーの方針で「この機能はユーザーに必要なのか」を問い、必要な機能に絞り込みました。またユーザーテストを実施し、使い勝手を追求しました。