風土を支えるリーダーたちの「こだわり」

 ドミノピザのデイブ・ブランドンCEO(最高経営責任者)やAOL創業者のスティーブ・ケース氏、ボーイングのジェームズ・マックナーニCEO、ウォルト・ディズニーのジョン・ペパー会長――。本書はそんなトップ経営者を生み出し続ける米P&Gの強さの秘訣に迫っている。P&Gで経験を積んだ23人の経営幹部の言葉から、「コア・バリュー(核となる価値観)」の大切さを説いている。

 企業風土礼賛に終わらず、それぞれのリーダーたちがバリューを実現するためにこだわってきた行動も語られる。例えばボーイングのマックナーニ氏は「主観を取り除き、客観性を取り入れる」というP&Gの意思決定を実現するため、少なくとも7回は社内連絡メモを書き直していたという。そうすることで「より満足のいく決定にたどり着くのに役立つだけではなく、決定をめぐって、みんなを一つにまとめる効用がある」と強調する。

 自動車部品のサプライヤーであるイノーヴァのエド・リゴー社長はP&Gで分析の仕方を学んだことを明かしている。具体的には、提案書や重要な案件のレポートなどで、必要な情報を1ページにまとめるやり方がそうだ。

 P&Gでは口頭でのコミュニケーションと同じくらい重要視されており、「メモライティングワークショップ」という研修があるほどだ。リゴー氏は「P&Gのあらゆる面が分析の達人にしてくれる」と言い切る。

 なぜP&Gはフォーチュン上位50社の常連であり続けられるのか。本書にはその理由を解き明かすヒントが詰まっている。経営幹部だけでなくミドルにも有益だ。

P&G 一流の経営者を生み続ける理由

P&G 一流の経営者を生み続ける理由
リック・トックウィグニー/アンディ・ブッチャー 著
和田 浩子 監修
門田 美鈴 訳
祥伝社発行
1680円(税込)