今回は、“企業内起業”の事例として、クアルコムの「ベンチャー・フェスト」を取り上げています。クアルコムは、ブランク氏が「顧客開発プロセス」を提唱する以前から、同じような取り組みを推進し、成果を収めていると語っています。(ITpro)

 2~3年前、私はリカード・ドスサントス氏と彼が主宰する素晴らしいクアルコム・ベンチャー・フェストに出会い、その理念と奥深さに驚嘆しました。その日から、アイデアの選択において、どの企業のイノベーション・プログラムが最適かと聞かれた時には、最初にクアルコムの名前を挙げます。

 このブログは、リカード・ドスサントス氏の「企業内アントレプレナーシップ・プログラムの誕生と終末の報告書」の事後分析です。前編ではそのプログラムの説明をし、後編ではそのプログラム実施時の課題と、その結果「学んだこと」を述べます。

プログラムの始まり

 フォーチュントップ100社にも選ばれ、サンディエゴ市に本社を置く無線技術とサービス提供企業であるクアルコムの新入社員として、私は2006年に、同社の“巣立ちアイデア・マネジメント・システム”(オンライン提案箱のしゃれた名前)を救済し、企業の包括的なアントレプレナーシップ・プログラムに転換する仕事をしたいと志願しました。

 クアルコムのビジョナリーであるCEO(最高経営責任者)のポール・ジェイコブ氏は、 クアルコム社内から出てきたアイデアから、画期的なイノベーションを見つけ、それを製品化したいと望んでいました。彼は、単なる創造的な考え方とか、これまでのイノベーションを維持するための提案箱を望んでいませんでした。ジェイコブ氏は、社員イノベーション・プログラムを新たにデザインする自由な権限を、私に与えてくれました。彼の唯一の要求は、元のプログラムの持つ、以下の二つの目標を継続することでした。

1. このプログラムは、全部門のだれもが参加できること。

2. 出されたアイデアは、現存の事業部門か研究開発部門で実行されること。すなわち、イノベーションのために新規の組織を作る必要がないこと。

 そして、ジェイコブ氏がより積極的にこの新しいプログラムに参画して支援できるようにするため、第3の目標を追加しました。

3. このプログラムは、最良のアイデアとその提案者が、すぐに表面に出て分かるような効率良い仕組みを持ち、最高経営幹部たちがそれらをタイムリーに注目できるようにすること。