前回までは、ITエンジニア自身が実践すべき、へこんだときの復活術を紹介した。それでは、一緒に仕事をするチームのメンバーがへこんだとき、リーダーはどう復活させればよいだろうか。へこんだメンバーがすぐに復活してくれないと、パフォーマンスが上がらず仕事の成果も得にくい。できるだけ早く復活させたい。

 ベテランPMに取材をしたところ、三つのステップがあると分かった。それは、(1)メンバーがへこんでいる状況をできるだけ早く察知する、(2)へこんだメンバーをケアする、(3)復活できるように適切なアドバイスを与える、である。順に見ていこう。

普段と違う様子や言動をつかむ

 リーダーが普段から行いたいのが、メンバーがへこんだ状況をできるだけ早く察知することだ。メンバーは自分からへこんでいることを打ち明けることは少ない。そこでリーダーが普段とは違う様子はないか、言動に異変がないかに注意を払おう(図1)。

図1●メンバーがへこんでいる状況の見極め方
図1●メンバーがへこんでいる状況の見極め方
メンバーは自らがへこんでいることを打ち明けることは少ない。リーダーは普段とは違う言動がないかに注意を払ったり、気分を一斉公開させたりする場を設けて、へこんでいる状況を把握することが大切だ
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 シーイーシーの伊藤氏によると、メンバーがへこんでいるとき、それを察知する上で典型的なのは、PCに向かっていても全く手が動いていない状況だという。「キーボードやマウスを操作していても動きが鈍いときは、声をかけるようにしている。へこんだ出来事に心がとらわれていて、やるべきことが手につかない状態になっていることが多い」と話す。

 NTTコムウェアのPM、小野雅弘氏(エンタープライズビジネス事業本部  第四ビジネス部 開発部門 担当課長)は、メンバーとの雑談で異変がないかを察している。「寒くなりましたね」と話しかけても、「そうですね」と答えるだけで、会話が弾まない。そのメンバーはへこんでいることが多い。「返事の最後に、声のトーンが下がったり、声が小さくなったりするときも要注意」(小野氏)という。

 このほか、メンバーがへこんでいるかどうかを確認する仕組みを、日々の業務の中で行うのも効果的だ。NECビッグローブの安西(やすにし) 剛氏(サービス開発本部 サービスラボG 主任)のチームでは毎日実施する夕会の時間のうち3分間ほどを使って、メンバーの感情面の状態を共有する場を設けている。付箋にその日1日の気持ちを書き出して、ホワイトボードなどに張り出してもらう。「普段口数が少ない人から、へこんでいることを知らせてもらいやすくなった」と、安西氏は効果を語る。