急増するソーシャルメディアの情報を使えば、思っても見なかったようなサービスを提供することが可能になる。これもビッグデータの特徴だ。

 エスエス製薬のWebサイト「カゼミル+(プラス)」は典型といえる。ツイッター上の膨大なつぶやき(ツイート)から、現在の風邪の流行状況や、先々の風邪の話題度を予測するなど、風邪予防に役立つ情報を提供する(写真1)。一つひとつは些細な情報だが、大量に集めて高度な分析を加えることで、「未来を予測する」という斬新なサービスを生み出した。

写真●エスエス製薬の「カゼミル+」
写真●エスエス製薬の「カゼミル+」
ツイッター上のつぶやきを分析して風邪の流行を予測する。自分がフォローしている人の風邪に関するつぶやきが読める
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 エスエス製薬がカゼミル+の提供で目指すのはブランド認知度の向上とマーケティング強化。「つぶやきから消費者の健康に対する意識をタイムリーに把握できるようになった。販促活動に反映するなど様々なメリットがある」と、エスエス製薬マーケティング本部の小野田慶シニア・ブランド・マネージャーはサービス提供の狙いを語る。

 エスエス製薬は東京大学の支援を受けてツイート分析プログラムを開発し、ツイートを大量に深く分析できるようにした。カゼミル+ではこの分析プログラムを利用して風邪に関連したツイートを言語解析し、実際に風邪を引いている可能性の高いツイートを抽出してグラフィカルに表示する。自分のツイッターアカウントを使ってカゼミル+にログインしている場合は、自分が閲覧するよう設定している人の風邪に関連するツイートを目立たせて表示してくれる。

 抽出したツイートを天気予報と組み合わせて、1週間後までのカゼ話題度を推測する機能も見逃せない。こうした予測ができるのは「ツイート分析プログラムによる分析を続けてきた中で、風邪に関連したツイートの増減と寒暖差に相関関係があることが分かってきた」(小野田シニア・ブランド・マネージャー)からだ。

 2012年10月にはiPhone用アプリの提供も開始した。カゼ話題度予測などの従来サービスに加え、「フェイスブックやツイッターでつながっている友人が風邪を引いていたら自動で知らせる」「風邪を引いた友人へのお見舞いメッセージを手軽に送る」などの機能を提供。現在流行している風邪の症状に合った風邪薬をレコメンドするサービスもある。