韓国の公共機関において、ビッグデータを分析し、業務に活用するためのシステムやサービスの需要が各分野で急速に高まっている。ただ、企業も含め韓国内における事例は多くない。担当者がそれぞれ試行錯誤しながら取り組んでいるのが実情だ。そこで韓国情報化振興院(NIA)は、公共機関の実務担当者がビッグデータを活用する際に参考にできるガイドを作成した。

 NIAが昨年12月5日に公開したのは「分かりやすい、公共部門ビッグデータ分析活用」。ビッグデータを活用する際に必要な事業方針や目標の策定、構築・導入プロジェクトのプロセスの進め方などについて手順を示している。

 まず解決したい問題が何であるかを明確にすべきとしている。国民や対象の公共機関に対してどのような価値を創出できるか、というシナリオを作成する。その上で組織内のデータ管理のポリシーや、稼働までに必要な費用・期間などを基に、システムを組織内に構築するのか、外部のサービスを利用するのかを判断する()。

表●韓国情報化振興院が示したビッグデータ活用システムやサービスの選択基準
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 NIAは公共機関のビッグデータ活用を「計画」「設計」「構築」「運用・管理」「拡張」の5段階に分けて策定するよう提案している。このうち「運用・管理」の段階では、分析システムを扱う専門人材の教育や訓練の実施が必要とする。ビッグデータを扱う組織体制についても考慮すべきと指摘している。「拡張」の段階では、分析項目の範囲を広げたり、精度や品質を上げるために新たなデータを使ったりする変更を加える。

 韓国の公共機関においてビッグデータの活用は、様々な分野で期待されている。一つがそれぞれの機関が保有するデータと外部のデータを連携させる方法だ。

 例えば、特定の話題についてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で市民の声を収集し、実際の申請や陳情の手続き状況との相関を分析。政策の課題を見出したり、地域で個別に対応する行政サービスを策定したりできる。

 教育環境の調査であれば、予算の執行や各種報告書、SNSなどの書き込みや苦情センターにおけるログデータなど多くの種類のデータを掛け合わせた分析が可能になる。

 もう一つが、大量データから意味のある情報を迅速に見出すことだ。例えば、伝染病の発生、金融取引における不正や税金逃れに結びつく行動のパターンを割り出すことである。国内外で日々発生する事象を分析の対象にすれば、国防や安全保障の政策立案に生かすことができるだろう。