宅配サービス最大手のヤマトホールディングスは、日本を代表するIT(情報技術)先進企業だ。「NEKOシステム」を駆使し、主力商品である宅配サービスの効率と質を高めてきた。経営とITの融合―。これを実践し成長を続ける同社の木川眞社長に情報化哲学を聞いた。

聞き手は戸川 尚樹=日経情報ストラテジー(取材時は日経ビジネス)


御社にとってITシステムはどのような存在ですか。

ヤマトホールディングス 代表取締役社長 木川 眞氏
ヤマトホールディングス
代表取締役社長 木川 眞氏
(写真撮影:陶山 勉)

 もはやITは、経営戦略や事業戦略そのものと捉えています。

 当社の代表的なITシステムと言えば、宅配業務を支える「NEKOシステム」です。これまで5年サイクルで再構築し、現在は7次NEKOを動かしています。もともとNEKOシステムは、業務を効率化・合理化するための道具でしたが、2005年の6次からは、合理化だけでなく、サービスの利便性や品質を高めるためのインフラという位置づけに変わりました。

 背景にあるのは、ITの普及です。最近ではスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレットが普及し、お客様の生活に自然に入り込んでいます。

 ITなしに生活できない顧客に対して、ITシステムを駆使して優れたサービスを提供することができるかどうか。これが他社との差異化ポイントになるのです。これまで宅配サービスの質を高めるというと、家の軒先から家の中に入り込むということが目標でしたが、これからは個人顧客をどこまで追いかけていけるかの勝負になります。

 グループ100周年となる2019年に向け、9年間の長期経営計画「DAN-TOTSU 経営計画2019」を作りました。目玉の1つは、地域や個人の生活に密着したサービスの強化です。少子高齢化や過疎化などの社会問題を解決するには、当社のサービスやそれを支えるITシステムが社会のプラットフォームとして有効であり、様々な事業機会が広がっていると見ています。