第5回では、利用者の動機付けのための3種類のリワードについて説明した。特に金銭的インセンティブではない「ソーシャルリワード」「インナーリワード」について紹介した。この2つのリワードをうまく使えるかどうかがゲーミフィケーションを成功させるカギともいえる。

 今回は応用編第2弾として、ゲーミフィケーション体験のデザインについて説明する。ここでいう「体験」とは利用者の体験という意味で使っている。多くの利用者にとって、ゲーミフィケーションの仕組みはもちろん、初めて訪れたWebサイトについては「どのようなサイトで」「どういった価値を得ることができて」「どんな機能が提供されているのか」ということについてほとんど何も分からない状態からスタートする。何回か訪れているサイトであったとしても、実際に使ったことがある機能はそのうちの一部ということも実際は多い。

 サイト運営者の立場であれば当然熟知しているがゆえに、実際の利用者がどこまで知らないか、といったことについては見落としがちでもある。かといって、説明的なコンテンツをわざわざ読んでもらうのも難しい。

 ゲーミフィケーションの実践にあたっては、利用者の体験の順序を考慮してデザインしていく。初回訪問時にいかにスムーズに利用者にサイトのことを知ってもらい、またゲーミフィケーション体験も積んでいってもらうのか。ある程度慣れた状態の利用者に対しては自発的に次に進んでもらうためにどうするのか。使いこなしている利用者に対してはどうか。利用者の体験量に応じて、「初心者」「中級者」「上級者」に便宜上分けて説明していこう。

 まず、それぞれ簡単に区分の定義を以下のように設定する。

  • 初心者:サイトに初めて訪問し、「何ができるのか」「どこに何があるのか」といった基本的なことをまだ理解できていない利用者
  • 中級者:基本的な使い方は理解し、ひと通り自分でサイト内を回遊できるようになった利用者
  • 上級者:サイトに定期的に訪れるようになっており、自分なりに使いこなしている利用者

 必ずしも厳密ではないが、概略をつかむため(※)ということでご容赦頂きたい。それぞれの段階の利用者に対してどのような体験をデザインするべきだろうか?

※実際に利用者のグルーピングをするのは実は意外に厄介な問題である。購買回数、ユーザー生成コンテンツの投稿回数、一定期間内の訪問回数、といった各サイトで重視するKPIに最も最近のアクセス日からの経過日数などを組み合わせたグルーピングは割りとよく見かける。ただこれらのKPIがカウントされるのは実際には体験のかなり先に進んだ利用者に限定されてしまう(例:購買回数。来訪者のうち実際に購買に至るのはご存知のように数%程度と言われ、グルーピングの対象としては母集団の数がかなりいびつになってしまう)など、必ずしも適切とは言えないことも多い。