カイゼンを進めるなかで、多くの企業は活動が滞ったり、成果が思うように伸びなかったりといった踊り場を経験する。カイゼンが一部の製品や職場にとどまり、全体に広がらない。順調に減ってきた在庫がもう減らない。短くなってきたリードタイムがもう縮まらない。

 その理由には様々なものがある。幾つかを最初に挙げてみよう。

(1) 組織の壁に阻まれ、カイゼンが行き詰まる

(2) 稼働率やまとめ生産を重視する考えとカイゼンの考え方が合わず、ブレーキがかかる

(3) 従来の生産管理が新しいものづくりに合わない

 (3)については、新方式に合わせて管理手法を見直せばいいが、簡単にはいかない。多くの企業はコンピュータで生産管理をしているからだ。生産管理方式を見直すためには、システムを再構築しなければならない。

 しかし、システム再構築には費用と工数、そして1~2年という期間を要する。カイゼンとともにシステムをスムーズに切り替えることが重要になる。今回はそれを達成した、アンリツ産機システム(神奈川県厚木市)を紹介する。

製品在庫の改造で在庫増、コスト増の悩み

 アンリツ産機は重量選別機や異物検査機器を製造・販売している。食品製造ラインにおいて、食品を高速搬送しながら高精度に計量する機器や、食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し、製造ラインから排除する機器だ。情報通信ネットワークやその関連製品を計測する機器を製造・販売するアンリツのグループ会社である。

 アンリツグループの売上高は779億円(2011年)で、アンリツ産機の売上高はそのうち、約16%を占める。ここ10年は安定して利益を出している優良企業である。

 アンリツ産機の製品は食品工場の製造ラインに接続して設置されるため、工場のレイアウトや接続される製造ラインの形状や条件によって、機器の大きさや形が変わる。工場の設置条件が早めに決まればいいのだが、なかなかそうもいかない。仕様が決まるのは客先納入日の7日前などということもある。

 仕様が確定してから製造すれば、無駄な在庫を持たなくていいが、それではとても間に合わない。あらかじめ標準仕様の製品を在庫にして持ち、顧客の仕様に応じて製品を改造していた。