日本郵政グループは、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、日本郵便の各基幹系システムと通信ネットワークを2013~2014年に刷新する()。重複システムの集約やハードウエア費用の削減で、約3000億円の年間IT費用を3分の2に抑える考え。同時に、新規事業向けシステムを稼働させる。

表●日本郵政グループにおける主要なシステム刷新の動き
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 持ち株会社の日本郵政は、グループ各社の拠点とシステムを接続する「郵政総合情報通信ネットワークシステム(PNET)」を2014年1月から1年~1年半がかりで段階的に刷新する。これに先立ち、郵便局など約2万7000カ所の拠点と全国約30カ所のデータセンター(DC)との間に、接続を仲介する「集約センター」を2カ所設ける。これにより、拠点新設時の接続テストの負荷を減らす。これまでは拠点を増やすたびに各DCとの接続テストが必要だった。

 日本郵便は、ゆうパック系と旧日本通運系の2系統に分かれていた宅配便のシステムを一本化する。2014年度に稼働予定だった次世代郵便情報システムのうち、宅配便の機能を2013年4月に先行稼働させる。2009年にゆうパックと旧日通の「ペリカン便」を事業統合し、2010年に同事業を日本郵便が継承してきたが、2系統のシステムを併存させたままで、ITコストがかさんでいた。

 ゆうちょ銀行は住宅ローンなどの新事業を始めるにあたって、3年間休眠させていた融資システムを稼働させる。2013年4月以降、事業認可が下り次第、稼働させる。このシステムは旧UFJ銀行の勘定系システムを基にNTTデータがカスタマイズしたもの。231億円を投じ2010年1月に完成したものの、事業認可が下りずに稼働できない状態が続いていた。

 同行の勘定系システムは2013年1月に刷新が完了した。東西2箇所のDCに分散していたシステムを統合し、運用保守費を減らす算段をつけた。

 かんぽ生命は、2012年11月に発覚した保険金の支払い漏れを受け、支払い管理体制を改善するシステム改修に着手している。さらに2017年1月、契約管理などを担う基幹系システムを刷新する。

 郵政グループのシステム刷新はこれまで、政府の度重なる政策変更に振り回されてきた。日本郵便と郵便局会社の合併を経てグループ体制が固まり、2015年の上場を目指してようやくシステム刷新攻勢をかけ始めた格好だ。ただし現政権下でも新規事業がスムーズに認可されないリスクは残る。巨大なITインフラの刷新にてこずる可能性もある。