国内IT大手4社の2012年4~12月期決算が出そろった()。通期で大幅な最終赤字を見込む富士通に対し、NECは営業黒字に転換した。構造改革の進展度合いで明暗が分かれた格好だ。

表●日立製作所、富士通、NEC、NTTデータの連結業績
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 富士通は2013年3月期の連結業績予想を下方修正し、950億円の最終赤字になると発表した。半導体事業の構造改革費用などで1700億円の特別損失を計上する。採算悪化に苦しむシステムLSIについては、パナソニックと事業統合することで基本合意した。通期の売上高は前期比2.2%減の4兆3700億円、営業利益は同5.0%減の1000億円の見通しだ。

 主力の「テクノロジーソリューション」部門の業績も振るわない。2012年4~12月期は減収減益だった。国内では携帯電話基地局などで増収だったが、海外ビジネスの悪化を補えなかった。同部門は通期で増収増益を見込むものの、他部門の悪化をカバーする力強さには欠ける。

 そこで富士通は、半導体以外でも構造改革を加速する。早期退職や外部リソース削減などで、国内外で5000人の人員削減に踏み切る。営業部門への人員配転や幹部社員の報酬カットも実施。山本正已社長は、「来年度以降の急速な回復のために必要な措置だ」と強調する。営業損益を年間400億円改善し、2015年度に2000億円以上の営業利益を達成する狙いだ。

 こうした富士通に対して、NECは好調だった。2012年4~12月期は増収となり、営業損益も黒字に転換した。国内製造業や流通業向けのITサービスが好調だったほか、航空宇宙・防衛システムなども増収に寄与した。

 NECは2012年3月期に1102億円の最終赤字を計上し、人員削減などの構造改革を進めてきた。これが奏功した格好だ。「第3四半期までは全てのセグメントで計画から上振れした。第4四半期で上積みを目指す」と川島勇CFO(最高財務責任者)は意気込む。

 日立製作所の情報・通信システム部門とNTTデータは、2012年4~12月期に営業減益となった。

 安倍晋三政権の発足以降、国内景気は上向きつつある。「ストレージ事業では円安メリットが見込める」(日立の中村豊明副社長)。「アベノミクス」を追い風に変えられるかが、国内IT大手の業績を左右しそうだ。