ミャンマーが注目を集めている。周知の通り、ミャンマーは長らく軍事政権下にあり、経済制裁の影響もあってASEAN(東南アジア諸国連合)の中でも経済発展が遅れていた。だが、2010年以降に民主化が進展。ミャンマーの地政学的な優位性や豊富な資源、勤勉で安価な労働力といった本来の魅力が評価されるようになり、世界各国の大手企業が進出を加速している。

世界大手の進出が加速するミャンマー、社会インフラの整備が成長のカギ

 ミャンマーを初めて訪れたビジネスパーソンの多くは、まずヤンゴン国際空港から市内まで続く街並みを目の当たりにして驚くだろう。他の新興国に比べて整然としており、シンガポールが都市計画の策定に当たって参考にしたとの話にもうなずける。

 ただ過去10年以上にわたって社会インフラへの投資がおろそかになっていたため、工業用地や幹線道路が十分に整備されていない。不動産の不足が深刻化しており、オフィス物件は貸し手市場で1年契約が当たり前。オフィスの賃料やホテルの宿泊費もここ1年で3倍以上に高騰した。発電設備の容量不足による停電も多く、自家発電設備の確保が不可欠。これらの課題をいかに解決できるかが今後の成長のカギとなりそうだ。

固定・携帯ともに普及はこれから

 通信インフラの整備もまだ不十分である。外資を含めた市場開放の動きはあるものの、現状は固定・携帯電話ともにミャンマー郵電公社(MPT)が唯一の提供事業者。料金競争がなく、設備投資やサービス展開も遅れている。2011年時点の契約数は固定電話が52万件、携帯電話が124万件で、人口普及率で前者が1.08%、後者が2.57%の水準にとどまっている。

 利用面で不便なことも多い。例えば携帯電話はポストペイド型のSIMカードが入手困難でプリペイド型が中心。SIMカードは有効期限の有無で主に2種類に分かれるが、どちらの場合もその都度、通話料金を充当する必要がある。固定電話も設備のリソース不足で使えないことがあり、場所によっては空いている回線を確保しなければならない。一方、インターネット接続サービスは市場開放が若干進んでいる。MPT以外のプロバイダーの参入で品質は向上しつつあるが、まだ発展途上というのが実情だ。

 こうした状況のため、ミャンマーではオフィス環境の整備や確保だけでも頭の痛い問題となっている。そこでKDDIシンガポールのミャンマー事務所では、従来のICT構築・運用だけでなく、オフィス環境を含め、基本インフラをまとめて提供する「ビジネスセンターサービス」を今春に始める予定だ。ミャンマーへの進出を計画する企業を積極的に支援していきたいと考えている。

瀬崎 智史(せざき ともふみ)
KDDIシンガポール 営業企画マネージャ。2012年10月にKDDIインドから同シンガポールに転任し、ミャンマー事務所の立ち上げに参画。インドには通算で10年在住。物事を見る際に、ついインドと比較してしまう癖が身に付いてしまった。