首都圏の最新データセンター(DC)で、一昔前のDCと比べて最も大きく変化している点は、サーバーラック1台当たりに供給される電力だ。10年前であれば多くても3キロワット(KW)程度だった1ラック当たりの電力供給は、今日では6~7KWにまで倍増した。2012年に開業したDCの中には、「1ラック当たり20KWにも対応可能」をうたう施設もある。首都圏DCの電力事情を見ていこう。

 1ラック当たりの電力供給は、DCを利用するユーザー企業にとって重要だ。なぜならDCの利用コストは、1ラック当たりの電力供給が左右するといっても過言ではないからだ。

 現在、1ラック当たりに収納できるサーバーの台数は、1ラック当たりの電力供給によってほぼ決まっている。一般的な「42U」(1Uはおよそ44.5mm)のラックには、高さ1Uのサーバーを42台収納できるスペースがある。サーバー1台当たりの電力消費が大きくなった今日では、ラックにサーバーを収納していくと、ラックのスペースが無くなる前に、ラック当たりの供給電力や、ラック当たりのサーバー冷却能力が足りなくなるようになったのだ。

 ユーザー企業がDCを利用する料金は、使用するラックの台数に応じて決まる。1ラック当たりに供給される電力が小さいと、より多くのラック台数が必要となり、DCの利用コストがかさむ。逆に、1ラック当たりの供給電力が大きいと、DCの利用コストは少なくなる。ユーザー企業にとっては、1ラック当たりの供給電力が大きい方が、より魅力的なDCである。

最新DCの電力は平均6~7KW

 このようなユーザーのニーズに応えるために、DC事業者は近年、1ラック当たりの供給電力が大きいDCを競って新設している。例えば、野村総合研究所が2012年11月に開業した「東京第1データセンター」(東京都多摩市、延べ床面積3万8820平方メートル)は、1ラック当たり平均7.5KWの電力が利用できる(関連記事)。

写真1●東京都三鷹市にある新日鉄住金ソリューションズの「第5データセンター」
写真1●東京都三鷹市にある新日鉄住金ソリューションズの「第5データセンター」
[画像のクリックで拡大表示]

 新日鉄住金ソリューションズが2012年5月に開業した「第5データセンター」(東京都三鷹市、同1万平方メートル、写真1)やキヤノンITソリューションズが2012年10月に開業した「西東京データセンター」(東京都西東京市、同1万6883平方メートル)、KVHが2011年2月に開業した「東京第2データセンター」(千葉県印西市、同1万4000平方メートル)はいずれも、1ラック当たり平均6KWの電力が利用できることをうたう。

 1ラック当たりの平均電力は、DCにおいてラック用に供給される電力の合計を、ラックの台数で割って算出している。「1ラック当たり平均6KWの電力が利用可能」という場合、DCにあるすべてのラックが6KWの電力を利用したとしても、問題は発生しない。