モバイル導入を進めているが、関係する部門が多く、どのように取り纏めれば良いか、またどの程度巻き込むことが適切なのかという相談を受ける。勿論、業務やシステム観点での取組みと同様に組織観点での取組みは、重要な要素である。

 そこで今回は、モバイル導入は、どのような部門と、どのように関わり、それをどのように推進していくべきか、見ていきたい。

多彩なテーマで多彩な部門

新しい働き方 - 人事部

 モバイルはいつでもどこでも持ち運べるデバイスである。そのため、就業時間の内外問わず業務が遂行できる。だが、便利である一方で、暗黙の時間外労働やサービス残業などが強いられるかも、という不安を抱く社員もいる。

 また、会社側にとっても、例えば会社以外の場所で業務を遂行した場合、どの位の時間、業務を実施したのか分からない、という問題がある。

 そのような中、モバイル導入を機に人事部などを巻き込みながら、就業規則などのルール、モバイルの活用シーン(時間/場所)などの条件設定、紛失時の罰則などを定める、または見直す必要が出てくる。

 例えば移動中の業務においては「勤務時間中は認めるが、出勤時・帰宅時の移動中の業務は認めない」「上司に報告の上 業務を実施し、終了後再度連絡すれば認める」などのルールを明示する必要がある。

BYOD - 人事部

 BYODでは個人のモバイルデバイスを業務利用するため、デバイス内に会社の情報とプライベートの情報の両方入り込む余地がある。そのため、この2種類の情報を切り分けられるかがポイントとなる。

 極端な例だが、何らかのアクシデントが発生し、その調査の為に個人のデバイスの中身を確認しなければならない場合、意図せずにプライベート情報が露出してしまう可能性がある。企業情報と個人情報の両面を考慮しつつ、双方の情報を何らかのシステムソリューションで切り分けるのか、運用で対応するのかなど、あらかじめ決めておかなければならない。

 そして、これらのリスクも前提にしたBYODプログラムへの参加ルールの策定や紛失時の罰則ルールなども同時に定めておかなければならない。

端末管理 - 総務部

 従来、携帯電話(フィーチャーフォン=ガラケー)は総務部が管理しているケースが多い。携帯電話からスマートフォンに置き換わる中で、スマートフォンは携帯電話として位置づけるのか、PCと同等なものと位置づけるのかという話を良く聞く。それに合わせ、管理するべき部門はどこになるのかという話も良く聞く。

 スマートデバイスは、データ通信と音声通話の両方ができ、且つWebとの接続が容易で、社内システムと連携できるデバイスと考えると、PCに近いと考えた方が良い。そのためセキュリティに関してもPCと同様の扱いが必要となる。そうなると今後は、総務部ではなく、IT部門がスマートデバイスを管理すべきこととなる。

 また、注意すべきなのは、本社の知らないところで、支社・支店などの総務部門がスマートフォンを購入していたりすることだ。PCの管理が全社統一で運用されるように、スマートフォンの管理も全社で統一したルールで運用されるべきである。

教育/トレーニング - IT部門その他

 世の中、これだけスマートデバイスが普及していることもあり、会社からの貸与後すぐに使いこなせる社員は多いはずだ。しかし、そうでない社員が一定限存在することも事実だろう。スマートデバイスと言えど、ITリテラシーのばらつきは存在し、教育が必要となる。

 教育の内容は、スワイプ、フリック、ピンチイン・ピンチアウトなどの操作方法から、情報漏えいを防ぐSNSの利用ルールなどのセキュリティ教育に至るまでテーマは多い。モバイルは短サイクルで機能追加されることが多く、教育内容の改廃頻度も早くなるが、出来るだけ管理する側の手間は省いていきたい。このような状況に合う仕組み作りを検討する必要があり、例えば電子マニュアルを端末にインストールしておくことや、e-learningの活用などは良い方法である。

 また、このような検討はひとつの部門に閉じた形で実施できるとは限らない。あらかじめ、IT部門、リスク管理部門、総務部など、複数の部門をまたぐことを想定しておく必要がある。

 他にもモバイルアプリに対しては、(プライベート使用のアプリと比較して)業務アプリの操作性が良くないなどのクレームや、アプリケーションストアにある一般のアプリが使えないのかなどの問合せが発生することも考慮し、あらかじめQ&Aを用意し、それを誰でも確認できるようにしておくことも大事である。

モバイルアプリ開発 - 開発ベンダー

 システム子会社や既存システム開発ベンダーが、モバイルアプリの開発ができるとは限らず、その場合、外部のベンダーに依頼することとなる。現在のところ、特定の分野を得意とするベンダーが多く、複数ベンダーに依頼する場合も珍しいことではないだろう。

 そこでIT部門は、どのように複数ベンダーを管理していくべきか、またどのようなナレッジを自社に蓄積させ、どのようなナレッジは外部に任せるべきか悩まされることになる。

 複数ベンダーの管理に関しては、全体をマネジメントしていくPMO的な役割も必要となるが、何よりもベンダー毎の得意分野を見極めることが大事である。ベンダー毎により良いものを引き出していくマネジメントが必要となる。

 ナレッジ蓄積に関しては、まずはモバイルアプリケーション開発などを外部ベンダーと協働で進めながら、判断していくことが有用な方法となる。このようなナレッジ蓄積に関しても、実行しながら判断し、適宜見直していくことが大事である。