「競合のなかで、料金は最も高かった。しかし、製品の機能はもちろん、この製品をどう当社のビジネスに生かせばよいかの戦略にまで踏み込んだ提案を受けた。この点が決め手となった」。タワーレコードの前田徹哉マーケティング企画・推進部部長兼オンライン事業本部本部長は、日本IBMの製品を採用した理由をこう話す。
タワーレコードは2012年10月、CRM(顧客関係管理)ソフト「UnicaCampaign」で新たなネット通販サイトを構築した(図4-1)。開発に情報システム部門はほとんど関わっていない。利用部門を統括する前田氏が日本IBMと直接交渉し、2カ月で作業を終えた。
技術の「目利き力」が不可欠
フロント志向を強め、CIOでなくCMOを攻めるとするIBM。日本でもタワーレコードのように、マーケティング部門などが直接、日本IBMとシステムを構築するケースが増えてくる可能性は大いにある。システム部門は自分たちの役割をどう捉えていけばいいのか。今以上に「技術の目利き力」を養う必要がありそうだ。
「米国のシステム部門は、テクノロジーが理解できないと自分たちの存在意義を失うことを理解している。だから必死になってテクノロジーを分かろうとする」。ガートナージャパンの亦賀忠明最上級アナリストはこう話す(別掲記事参照)。日本でも同じ状況が目前に来ているといえる。
あるパートナー担当者は、「米本社による買収が相次ぎ、日本IBM側の知識が追いついていない製品が多くある。ソフトウエア関連は要注意」と話す。特にスマーターコマース関連の製品やサービスは急ピッチで増加しており、「担当者が表面的にしか分かっていないことが多い」(同)。システム部門が技術の目利き役を果たせば、こうした場合でも正しく判断できる。