「CMOを攻める」「バックエンドからフロントのシステムへ」。本社幹部が強調したメッセージを実現すべく、日本IBMは体制の整備に乗り出した。

 マーティン・イェッター社長は2012年7月までに、「スマーターコマース」「ビジネスアナリティクス」などフロントシステムに直接関連する領域を中心に7分野を、日本IBM復活に向けた重点領域と位置づけた。

 スマーターコマースの総責任者には、インダストリー営業統括本部本部長のポール与那嶺専務を指名。同本部が担当する最大手の企業や公共の顧客にスマーターコマース関連のサービスやソフトウエアを売り込む姿勢を示した。2012年8月にはコンサルティングを担当するGBS部門にスマーターコマースの専門部隊を設置。これまで同分野を担当してきたソフトウェア部門と連携する体制を整備した。

 ビジネスアナリティクスも全社横断で取り組む。ソフトウェア事業のヴィヴェック・マハジャン専務を総責任者に据え、GBS部門の鴨居達哉常務をリーダーに据えた。2012年6月には鴨居常務をトップとして、ビッグデータに関する専門家の社内横断組織「チーム・ビッグデータ」を設置。横連携を図る体制を敷く。

再利用とM&Aで製品強化

 一方、米IBMはフロントシステム分野への攻略に向け、製品や技術の強化を急ピッチで進める(図3-1)。「我々の製品の構成(ポートフォリオ)は以前と比べ大きく変貌した。しかも市場で大きな成功を収めている」。IBMのソフトウェア事業とハードを中心とするシステム事業を統括するスティーブン・ミルズ上級副社長(SVP)はこう説明する。その裏にあるのは「ビジネスに寄与する技術」に対する確固たる自信だ。「日本チームがより速く、より俊敏に、よりアグレッシブに、新たな製品やソリューションを市場に投入できるようにする確信とスキルを持たせる。これがマーチン(イェッター氏)のチャレンジだ」と語る(別掲記事参照)。

図3-1●IBMの強みの源泉
技術の強みを製品/サービスの強みにフルに活用している
図3-1●IBMの強みの源泉
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 IBMはどう製品の強化を進めているのか。方策は大きく二つある。一つは既存技術や製品の再利用・再ブランド化だ。「我々がバックオフィス向けに作ったソフト資産を『ビルディングブロック』として利用し、フロント向けのソリューションを実現している」(ミルズSVP)。ソフトウェア・グループの稼ぎ頭であるミドルウエア製品群「WebSphere」は、何百回も再利用したという。

 米IBMが2012年9月20日に発表した「Commerce-as-a-Service」はその一例だ。スマーターコマースに必要な見積もり、値付けといった機能をクラウドサービスとして提供する。WebSphereなどの既存技術や製品を生かしている。