日本IBMの売上高が過去最大だったのは2001年。1兆6268億円に達した。これが2011年は8681億円と、10年前に比べ47%縮んだ(図2-1)。利益率は2010年は微増。2011年はソフトウエア関連の計上方針の変更で大きく落ち込んだ。やはり、米IBMと比べると大きく見劣りする。

図2-1●日本IBMと米IBMの2000年以降の主な動き
ハード事業の撤退や管理強化で日本の売り上げはほぼ半減した
図2-1●日本IBMと米IBMの2000年以降の主な動き
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 マーティン・イェッター社長の喫緊かつ最大の課題は、日本IBMの売上高をいかに上昇基調に戻すかだ。日本IBMの売上高が下げ止まらない理由については、「前任者(橋本孝之前社長)に聞いてほしい。私は将来だけを見つめている」と明言を避け、「日本の顧客がIBMに何を求めているのかを理解し、グローバル企業として必要なものを提供するのが私の役目だ」と語る(関連記事:私は成長の話しかしない、世界のIBMで顧客を支援---日本IBM 代表取締役社長 マーティン・イェッター氏参照)。

 イェッター社長が実行する成長戦略の中核を成すのは、グローバル展開を支援する、ビジネスの意思決定を直接支える製品やサービスを提供するといった米本社と同一の事業方針だ。イェッター社長は日本IBMの持つ弱点を補い、それらを推進する戦略を実行に移し始めた。

 これらの戦略を見る前に、なぜ日本IBMは10年で売上高を下げ続けたのか、パートナーや顧客が持つ日本IBMに対する意見を検証していこう。

管理強化でリスク回避に

 日本IBMの売上高が縮んだ要因として、まず挙げられるのは事業売却だ。2001年から2005年にかけて売上高が3分の2に縮んだのは、IBMがPCやハードディスク装置のビジネスから撤退したのが主要因だった。サミュエル・パルミサーノ氏がCEO時代に、市況変動が激しいハード事業からの撤退を断行。日本IBMは全世界向け事業の一翼を担っていた。

 橋本氏が社長に就任した2009年前後は、リーマン・ショックの影響で顧客がIT投資を一気に絞り込んだ。これも売上高減少の要因となった。