2012年9月中旬から、米IBMの幹部が東京・箱崎の日本IBM本社に駐在している。全世界の中堅向けゼネラル・ビジネス事業を統括するスティーブ・ソラッゾ ゼネラル・マネージャー(GM)だ。

 ゼネラル・ビジネス事業は、年間216億ドル(約1兆6800億円)を稼ぎ出す。IBM全体の売上高のおよそ2割に当たり、ソラッゾ氏はその責任者を務める。米本社のGMが日本に駐在するのは「異例中の異例」(日本IBM関係者)。マーティン・イェッター社長の強い意向が働いたとみられる。

 イェッター社長はドイツIBMを立て直した実績を買われ、2011年に米本社で経営戦略立案を手掛けるバイスプレジデントに抜てき。自身が立てた日本IBMの再建案を携えて、2012年5月に日本IBM社長に就任した。

 イェッター社長は米IBMの日本事業担当GMの顔を持つ。米本社の戦略と実行の責任者が日本に送り込まれた格好だ(図1-1)。

図1-1●日本IBMの幹部組織図
2004年以前はほとんど日本人だったが、約半数が米IBMや外資系企業出身の外国人が占めるようになった
図1-1●日本IBMの幹部組織図
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 IBM本社は2005年以降、幹部を派遣して日本IBMのテコ入れに乗り出していた。ただ、これまでは主に管理部門の強化が狙いだった。プロジェクト案件や顧客との契約、資金の流れなどのチェックを強化する「締め付け型」(日本IBMのOB)だったのである。

 イェッター、ソラッゾ両氏を日本に送り込んだ今回は方針が180度異なる。日本の事業戦略を本社と完全に同期させ、グローバルの人材やノウハウ、サービス資源を日本で徹底活用する。それによって業績の長期低落傾向を食い止め、新たな成長戦略を実践する。

 これが、米IBMが描く日本IBMの改革の青写真だ。イェッター社長が業績不振のドイツIBMで実施した再建策でもある。