「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」「インフォメーション」の4つの力の結び付き。米ガートナーはこれを「Nexus of Forces」と呼び、ユーザーの行動様式を変える一方で、新たなビジネスチャンスを生み出す原動力になるとの見解を発表している。このNexus of Forcesについてガートナーは、米国・オーランドで2012年10月21日~25日に開催された「Gartner Symposium ITxpo 2012」のキーノートで詳しく解説した。その講演を5回にわたってお届けする。

 最終回となる今回は、リサーチ・バイス・プレジデントを務めるマリー・マザーリオ氏による「CIO(最高情報責任者)への提言」を紹介する。なお講演の動画は、ガートナーの日本語サイトから視聴できる。


 今という時代は、CIOにとって本当に大変な時代だ。CEO(最高経営責任者)は、自社が外の世界と出会うところにインパクトを与えることをCIOに求めている。利益を上げ、ミッションを遂行すること。CEOは、ビジネスの差別化を実現する力を活用することを求めている。

 バックオフィスを自動化することに「すべて」を費やすことを望んではいけない。CEOが求める価値、それは自社と顧客、市民とのインタフェースをデジタル化し、そのプロセスの中でまったく新しいビジネスチャンスを創出することだ。

 我々がCIOの皆さんに送るメッセージは次の通りだ。Nexus of Forces(4つの力の結節)が実現する世界、それは(1)新たな収益の流れ、(2)新たなミッション、(3)新たな可能性---。ただし、既存のビジネスモデルを単にデジタル化したコピーでは、実現することはできない。

ガートナー リサーチ・バイス・プレジデント マリー・マザーリオ氏
ガートナー リサーチ・バイス・プレジデント マリー・マザーリオ氏

 私が何を言おうとしているのか、次のことを考えてみてほしい。

 例えば、小売業の英Tescoの韓国の食料品店「Home Plus」では、地下鉄の駅に実物大の小売棚の写真を設置した。地下鉄の利用者は2次元バーコードで商品をスキャンしてデジタルの買い物かごへ入れ、自宅に配送してもらうことができる。このタイプのシナリオは、いわゆるモバイル・コマースではなく、物理的なショッピングでもなく、かといってすべてが完全にデジタル化されているわけでもない。

 これは企業が顧客のニーズに応えるために実現した先端の事例だ。現在Home Plusは、韓国で最も人気のあるショッピングアプリケーションで、ダウンロード数は100万に迫る勢いとなっている。Tescoは、これをバス停にまで広げつつある。

 このような事例を目にした今、皆さんは次のステップをどのように考えるだろうか。起業家として、自分の会社を変革しようとしていると考えてみてほしい。