「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」「インフォメーション」の4つの力の結び付き。米ガートナーはこれを「Nexus of Forces」と呼び、ユーザーの行動様式を変える一方で、新たなビジネスチャンスを生み出す原動力になるとの見解を発表している。このNexus of Forcesについてガートナーは、米国・オーランドで2012年10月21日~25日に開催された「Gartner Symposium ITxpo 2012」のキーノートで詳しく解説した。その講演を5回にわたってお届けする。

 第1回目の今回は、ガートナーのリサーチ部門最高責任者であるピーター・ソンダーガード氏による「Nexus of Forces」(力の結節)の紹介だ。なお講演の動画は、ガートナーの日本語サイトから視聴できる。


 「Nexus of Forces」(ネクサス・オブ・フォース、力の結節)がかつてないほど強まっている。Nexus of Forcesとは「力の結節」を意味する。これは4つの力が合流、統合された状態で、その4つの力とは、(1)クラウド、(2)モバイル、(3)ソーシャルコラボレーション、(4)インフォメーション---だ。

 変化が加速している時代。今、皆さんが使っているITアーキテクチャが時代遅れとなる時代。皆さんは、この変化の時代をリードしなければならない。影響の少ないシステムを選択的になくしていき、ITのコスト構造を積極的に変えていく必要がある。これが、Nexus of Forcesの新しい世界だ。

 コンピューティングの次の時代。この変化を理解するには、個々の力を正しく評価しなければならない。それではこれらの力を順に見ていこう。

ガートナー リサーチ部門最高責任者 ピーター・ソンダーガード氏
ガートナー リサーチ部門最高責任者 ピーター・ソンダーガード氏

今のクラウドの状況は“始まりの終わり”

 まずは、クラウドだ。クラウドは、他の3つの力を運ぶ役割を果たす。モバイルはパーソナル・クラウド。ソーシャルメディアはクラウドがなければ実現できない。ビッグデータは、クラウドのキラーアプリケーションだ。クラウドは永続的な基盤、基礎となる存在である。

 クラウドの目的は、単なるコスト削減ではない。単なる安いオンデマンドサービスにとどまるものではないのだ。実際、これらのサービスの90%は今もサブスクリプションベースで、皆さんが思うような従量制ではなない。今我々は、クラウドがもたらすコスト面のメリットを手にしはじめたばかりのところにいる。しかし、クラウドへと移行している企業・組織もまた、今はまだ手にしていない新たな能力に魅力を感じている。

 例えば、(1)これまで以上の処理能力、(2)スケールアウト、(3)大規模なパラレリズム(並列処理)の導入などだ。これによって、特にクラウド向けのアプリケーションを構築するための、これまでになかった新しいアプローチが生み出されている。