「社会人の“いろは”は会社の先輩だけでなく、担当したプロジェクトで関わった設計会社や建設会社の方々からも教えてもらいました。現在はウェブによる情報発信を担当していますが、我々の強みは、現場が作る建物の品質とお客様に対するソフトサービス。それらを生かし、ブランドの発信力につなげることが大切だと思っています」

 そう語るのは、三井不動産広報部ブランド・マネージメントグループ統括の斎藤貴夫さんだ。同グループは、オフィスビルや商業施設、ホテル、リゾート、住宅などの開発で知られている。だが意外なことに、単体の従業員は1256人に過ぎない。グループ会社や協力会社とのアライアンスを組みながら、プロジェクトを推進している。

 斎藤さんも、新入社員時代から大きな仕事を任されるなかで、技術を持った協力会社があってこそ、建物の品質が維持できることを学んだ。「建物もウェブも同じです。技術を持つ現場の多くの人を少ない人数でマネジメントする役割、どういう知恵を出すかが勝負です」

プライベートでは山岳部の監督

 斎藤さんはプライベートでは、母校の慶應義塾大学体育会山岳部の監督を務め、学生の指導をしている。登山は危険を伴うスポーツだからこそ、パーティーを組み、山に安全に登るためには、個々の技能だけではなく、組織やメンバーをまとめるマネジメント能力が必要だという。

 監督としての斎藤さんは、普段から学生に「相手を理解するためには、効率を求めず、コミュニケーションを大切にしろ」と教えている。

 「メールで済ませるな」とも。ウェブ担当としては、はみ出し発言とも取れるが、1つのプロジェクトを推進するのに、数多くの手順を踏む不動産業界では、むしろ斎藤さんのような姿勢が求められる。

 斎藤さんは、三井不動産のコーポレートブランドをウェブで発信すると同時に、ウェブ運営の技術を高めるために、グループ約20社と「ウェブマスターコミッティー」という会議を開いている。ウェブの最新技術を学ぶ会議である。

 コーポレートと各商品のブランドは表裏一体だが、商品を持つ現場が新しいことに挑戦する方がブランドはより進化する。そのためにコーポレート部門は、現場の後ろ盾でありたい。

 ブランドがあるから、技術がついてくるわけではない。技術の裏付けがあるからこそ、三井不動産のブランドが保たれている。斎藤さんがウェブで表現したいのは、この力強さである。


石黒 不二代(いしぐろ ふじよ)
石黒 不二代(いしぐろ ふじよ) ネットイヤーグループ社長兼CEO。名古屋大学経済学部卒業後、1981年ブラザー工業に入社。米スタンフォード大学でMBA(経営学修士)を取得。米シリコンバレーでコンサルティング会社に勤務し、99年にネットイヤーグループの設立に参画。2000年から現職。