先日、企業のソーシャルメディア活用にあたって、特に管理面において今後の課題となりそうなことを改めて考えさせられる出来事が起こった。某音楽小売大手で実際にあった話である。

 既に知っている人もいると思うが、知らない人のために簡単に経緯を紹介しておこう。この会社のソーシャルメディア担当としてアサインされていたインターンのスタッフが、自分を含めて約60人以上に対して解雇を通達された際に、その旨を公式Twitterアカウントを通じて実況したということがあった。このツイートは、同社の公式Twitterアカウントの6万超のフォロワーの目に留まり、瞬く間に拡がっていった。

 この出来事の背景をさらに深く掘り下げていくと、企業がソーシャルメディアを活用するにあたって、現状存在している潜在的なリスク要因という課題が浮き彫りになってくる。

依然として数多く残る一人だけの“草の根”運用

 まず注目したいのは、この公式Twitterアカウント(Facebookページも含む)の担当者がインターンのスタッフで、少なくともこの2年間に渡ってオペレーションを担当していたと唯一の存在だったという点である。もちろんインターンのスタッフにオペレーションを担当させること自体に問題があるわけでは決してない。むしろ、こういった若い人材をアサインすることでパフォーマンスが向上している例も数多く存在する。

 ただ、このスタッフが自身のTwitterアカウントを通じて「家族もローンもない私が一番(発言するのに)適任だと思った」と後に発言している点も考慮すると、このスタッフ一人だけを担当者にしていたという体制が企業の公式の情報発信窓口としてよかったのかという疑問が少なくとも残る。また、オペレーション体制だけではなく、運営にあたっての設備や環境面においても、リスク要因として考えられる点が見え隠れしている。

 さらに、当のスタッフが自分自身のTwitterアカウントを通じて発言した中には「今日の午後、会社にパスワードを教えてくれと頼まれたとき喜んでそうした」「新しいFacebook担当スタッフの設定をやってあげたし、管理者リストから自分を削除した」という記述が見られる。このことから、このスタッフが公式TwitterアカウントならびにFacebookページを、その日常のオペレーションだけではなく、アカウント管理まで含めて全て担当していたと考えられる。

 これは例えると、自社のWebサイトに関して、そのサーバー管理からコンテンツ制作まで、全て一人のインターンのスタッフに任せっきりにしている状態に等しい。