中国ビジネスの見直しを迫られる日系IT企業だが、いつまでもこの低迷が続くと考える向きは少ない。「市場からの撤退はあり得ない」と、全社が口をそろえる。
「中国からの撤退はありえない」
「中国は日本よりも高い経済成長が続いており、IT市場規模は2012年に日本を上回る。市場としての可能性が大きいことに変わりはない」。日立(中国)の渡部芳邦 常務副総経理は力を込める(図1)。大きな戦略の変更は必要なく、戦術レベルでの工夫が大切だと考える企業がほとんどだ。
今回のようなチャイナリスクをどう乗り越えようとしているのか。各社は三つの対策を採り始めた(図2)。
一つめは、現地キーパーソンとのルートやパイプ作りを維持する努力を欠かさない。「早めに変調を察知して、日中関係が悪化しても、会ってもらえる人脈のパイプやルートを確保しておくことが重要」とNECの木戸脇総代表は強調する。
政府間の関係がこじれてしまうと、トップ同士は公に会いにくくなる。そうした場合でも、実務者レベルや現地スタッフを通じての会話など、あらゆるルートを開拓したり関係をできるだけ太くしたりして、会話ができる状態を維持することを重視しているという。
あるNEC関係者は、こう打ち明ける。「デモや暴動がピークに達した9月下旬から対策するようでは遅い。実は今春に、石原(慎太郎 前東京都知事)氏が『尖閣を東京都が購入する』と発言したあたりから警戒し始めて、中国要人とのパイプやルート作りを今まで以上に強化していた」。