影響が出ているのは、中国政府系機関や中国政府系企業向けの営業に限らない。中国に進出している日系企業への販売活動にも変調が生じている。多いのは、システムやサービスなどの導入や利用開始の延期である。

契約やプロジェクトが延期

 天津で自前DC(データセンター)を開設、サービスを提供しているTISはその1社だ。天津のDCでは、2010年に始めたハウジングやホスティングサービスに加え、2011年にクラウドサービスの提供を開始。初期投資を抑えたい日系企業の需要を獲得し、「クラウドの顧客は順調に増えていた」(丸井崇 海外事業企画室長)。ところが尖閣問題が発生してから、サービスの試験利用を延期する企業が急増している。

 TISのクラウドサービスは、自動車部品関連など製造業の顧客が新たに中国へ進出する際に、試験的に利用するケースが多い。ところが9月以降、中国進出そのものを遅らせる企業が増えてきた。計画を取りやめたわけではないが、進出やサービス提供の時期は明確でなくなった。

 中国でWebシステム構築基盤ソフトを販売しているNTTデータイントラマートも同様だ。同社が受注したシステム構築プロジェクトを延期する例が複数出ている。その多くは、自動車部品メーカーを中心とした製造業の顧客だという。

 中国での日本車不買運動の直撃を受け、日本の自動車メーカーによる減産や販売見通しの引き下げが相次いでいる。自動車部品メーカーはこの影響をもろに受けた。「中国での事業の今後が見通しづらくなり、IT投資を急激に絞り始めた」(中山義人社長)ため、システム導入プロジェクトが延期となるケースが出ているのだ。