第4回では、ゲーミフィケーションにまつわるよくある質問・誤解を取り上げた。ゲーミフィケーションという言葉は様々な捉え方ができてしまう。誤解のされ方が両極端になり得るのはゲーミフィケーションの特性かもしれない。

 さて、今回から本連載は応用編となる。より踏み込んだ説明になるので第1回~第4回の概要編を読み返しながら是非理解を深めていってほしい。まずはゲーミフィケーションに必須といっていい「リワード」の概念について解説していく。

リワードは動機づけのためフィードバック

 リワードとは、日本語に訳すと「報酬」という意味になる。ゲーミフィケーションの文脈においては、利用者を動機づけるために利用者に与えられるフィードバックのことを総称してリワードと呼んでいる。

 フィードバックというと表現が抽象的になるが、具体的には現実世界でよく見られるものとして金銭的なものがある。何かを達成するとクーポンや金銭的価値のあるポイントが付与されたり、割引が提供されたりするようなものが相当する。

 ただ、利用者の動機付けに役立つフィードバックは金銭的なものだけではない。例えば「誰かよりも良くできていることが分かること」も動機付けには有用だ。また逆に、「誰かに負けていることが分かって悔しい気持ちになること」が動機付けになる場合もある。自分「だけ」に付与された限定性の高いもの(VIPルームへの入場権など)も金銭的価値の多寡によらず嬉しくなるリワードの1つだ。

 「自分が今までできなかったことができるようになった時」「新しいことを知った時」なども動機付けられる瞬間だ。こうした瞬間を記念するようなフィードバックもリワード性が非常に強い。

 特にゲームの世界を見れば、この種の様々なリワードを見ることができる。「ドラゴンクエスト」などのロール・プレイング・ゲーム(RPG)で主人公が“レベルアップ”した時の効果音は、なんとなく気分を盛り上げてくれるものだ。このような演出であったり、何か目に見える称号のようなものとして表現されることもある。

 筆者は前述した3種類のリワードを区別し

  • マネタリーリワード:金銭的な価値を主体とするもの
  • ソーシャルリワード:他者との比較において心理的な満足感を得られるもの
  • インナーリワード:自分の中での心理的満足感を得られるもの
と呼んでいる。