以前から感じていたことだが、日本国内の企業においてソーシャルメディアがマーケティングやコミュニケーション活動に活用され始めてきてから、どこかで無条件に「米国を中心とした海外でのソーシャルメディア活用は日本よりも進んでいる」という前提があるように感じる。少なくとも現場のマーケターの間では、その前提であれこれ考えてしまっているように見える。

 確かに、いわゆる「海外事例」と呼ばれるものの中には非常に素晴らしい取り組みも数多く存在するし、その中には日本ではなかなか実現が困難ではないかと感じさせられるものも少なくない。ただ、これらはやはりあくまで一部の突出した例ではないかとも思っている。

現場担当者のKPIに売り上げ直結の指標が組み込まれるように

 実際、海外でも日本と同様に、ソーシャルメディアとそのマーケティングやコミュニケーション活動に関する様々な考察や事例など、日々いたるところで紹介されている。だが、これらを眺めていると、そこに書かれているテーマやトピックなどは、日本でもよく見かけられるものが非常に多く並んでいたりもする。

 タイトルひとつ取ってみても「◯◯◯をビジネスに活用する方法」や「◯◯◯を△△△するための×つの方法」といったものがほとんどだ。「◯◯◯」の部分は、TwitterやFacebook、あるいはGoogle+やPinterest、Tumblrといった違いはあれど、ソーシャルメディアのサービスやプラットフォームが必ず入ってくる。

 内容も、よく読むと似たり寄ったりだ。基本的には、ソーシャルメディアをいかに活用する(させる)かといった点に終始しており、その際に熟考すべきである細かな点についてはなかなか詳細に言及されていないケースが少なからず見受けられる。つまり「あおる」だけのものになってしまっていることが、ほとんどになってしまう。

 ただ、こういった話に終始するだけでは、決して前に進まないということは、当の現場のマーケターたちも既に考えており、その考え方も少しずつ変わってきているようだ。そして、その背景には、ソーシャルメディアの活用を含めたデジタルマーケティング活動そのものが、これまで以上に利益貢献を求められるようになってきているという状況がある。つまり、ある意味差し迫ったものが見え隠れしていると言ってもいいだろう。

 いろいろと話を聞いていると、特にデジタルマーケティング担当者(あるいは担当部門)に対して求められていたKPIも、年が明け、会計年度が改まることをきっかけに変わってきているようだ。これまでは、どちらかと言えば(自社のウェブサイトやソーシャルメディア上に設けられた窓口に対する)トラフィック、そしてリードジェネレーションの規模となることが多かった。だが、さらに売り上げに直接的に(あるいは、それに近い形で)紐付いてくる指標がプラスされてくるケースが増えてきているようだ。つまり「人を集める」という活動から「人を集め顧客化する」というところまで求められるようになってきたということになる。