2012年に入って成長に陰りが出ているとの指摘があるインドだが、現在も年5%を超える経済成長を維持している。対日感情も良いことから日系企業の進出が引きも切らない。

 金融・サービス業の中心地は商都ムンバイに譲るものの、首都ニューデリーは多くの政府行政機能を有している。周辺の衛星都市と合わせて「デリーNCR(デリー首都圏)」と呼ぶ都市圏が形成されている。多国籍企業の多くがデリーNCRに本社機能を置く。

急成長するインド・グルガオン、社会インフラは追いつかず

 デリーNCRの中で近年、特に発展しているのがニューデリーの南西30kmに位置する「グルガオン」である。荒涼とした砂漠にある小さな街だったが、10年ほど前にインド地場資本のデベロッパーが都市開発を実施。これにデリー中心地でオフィスビルの老朽化と賃料値上げに苦しんでいた外資系企業が飛びついた。現在では、北インドに進出する外資系企業の約80%がグルガオンに拠点を構えている。日本の政府開発援助などでデリーとグルガオンを結ぶ地下鉄が開通し、ビジネス街としての交通インフラも整備されつつある。ほかのインドの都市にはほとんどない大型ショッピングモールや高層アパートも相次いで建設され、富裕層を中心に人口が急増している。

 当社も2011年10月にグルガオンに本社機能を移した。その南西100kmに位置するインド初の日系工業団地「ニムラナ」の支店と協力しながら、ユーザー企業の北インド進出をサポートしている。

ビジネス都市だが1日10回の停電

 インド最先端のビジネス街に変貌を遂げたグルガオンだが、急激な都市化に社会インフラの整備が全く追いついていない。停電が1日10回以上発生して、安定した事業継続の妨げとなっている。2012年8月に発生した3日間に及ぶ大停電では、約6億人が影響を受けたと言われており、大企業もその例外ではなかった。自社のサーバールームへの電力供給が止まって基幹業務システムが相次ぎダウン。全インドのオペレーションをストップさせなければならない事態に陥る企業が続出した。

 このような事態を受け、自社で管理していたサーバーをデータセンターに預ける流れが加速している。切れやすい通信回線を理由に外部データセンターの利用をためらっていた企業も、通信回線の冗長化などの工夫で可用性を確保しながら、ミッションクリティカルなシステムを安定稼働させている。

 2012年8月にNTTコミュニケーションズ傘下となったネットマジック・ソリューションズは、インド国内に7つのデータセンターを有する。当社はこれらのデータセンターやネットワーク、システム全体の設計を取りまとめ、ユーザーの事業継続を支援することを使命に、日夜汗を流している。

小林 将和(こばやし まさかず)
NTTコミュニケーションズインディア代表取締役社長。1990年NTT入社。本社法人営業部門、国際部門などを経て、1995年からAPAC諸国の海外現地法人で主に日系企業向け通信システム営業に携わる。マレーシア、インドネシア、タイでの勤務を経て、海外赴任16年目をインドで迎える。2012年8月から現職。