ERP(統合基幹業務システム)パッケージ大手のSAPジャパンと日本オラクルがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の拡充を急いでいる()。

図●SAPとオラクルが日本で投入する主なクラウド関連製品
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 SAPジャパンは年内にも、中堅中小企業向けERP 2製品をSaaSとして提供する。日本オラクルはタレントマネジメントやCRM(顧客関係管理)を中心にSaaSを拡充していく。1月31日には、タレントマネジメント用SaaS「Taleo Cloud Service」の提供を開始した。

 SAPジャパンがSaaSとして提供するERPは、中堅企業向けの「Business ByDesign」と中小企業向けSaaSの「Business One(B-One)onDemand」である。どちらも海外では提供中のサービスだ。独SAPのビル・マクダーモット共同CEO(最高経営責任者)は、パートナー経由で提供するB-One onDemandについて、「中堅中小向け市場を大きく変えるサービスとなる。日本市場のパートナーにも広く門戸を開いている」と期待を寄せる。

 SAPジャパンはERP2製品に加えて、タレントマネジメント用SaaS「SuccessFactors」や購買支援用SaaS「Ariba」の販売も拡大していく。SAPジャパンの安斎富太郎社長は「当社はクラウドの印象が薄かったかもしれない。2013年はクラウドといえばSAPと打ち出したい」と話す。

 日本オラクルも2013年を「クラウドの年」と位置づけている。その第一弾として提供を始めたTaleo Cloud Serviceは、米オラクルが2012年に買収した米タレオのSaaSで、日本で提供するのは初めて。「タレントマネジメントの需要が高まっている。クラウドの利用者拡大につなげていきたい」と、アプリケーション事業統括本部の道下和良CRM/HCM事業本部長は話す。

 CRM分野にも力を入れる。「RightNow」「Eloqua」など、海外で実績のある買収製品を日本市場に順次投入する計画だ。日本で一部機能を提供しているSaaS型ERP「Fusion Applications」も、日本市場の動向を見ながら拡充していく。

 SAPとオラクルが基幹系のクラウドシフトを加速しているのは、この領域でもシステム導入の短期化を顧客が求めているからだ。SAPのマクダーモット共同CEOは「SAPの全てのアプリケーションをクラウドとモバイル向けに作り直す」と宣言。片や米オラクルのラリー・エリソンCEOは4月に来日して、同社のクラウドを日本の顧客に売り込む。基幹系でのSaaSの利用が本格化しそうだ。