杉山 雅彦
本連載では、日本企業が「GRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)」にどのように取り組むべきかについて、企業が直面するリスク事象への対応策を含めて全体像を説明している。
前回(リスクマネジメントはなぜ機能しないのか?)は、日本におけるリスクマネジメントの歴史とともに、リスクマネジメントが機能しない二つの理由について触れた。理由の一つめは「これまでのリスクマネジメントは損失リスクにしか対応していなかった」ことである。この点については、前回説明した。
理由の二つめは、「リスクの質が変化した」ことである。リスクマネジメントの対象となるリスクの質は、従来に比べて大きく変化している。これが、現代におけるリスクマネジメントを一層困難にしている原因であると思われる。今回はリスクの質の変化を、以下の五つの例で説明したい。
- 新興国リスク
- カウンターパートリスクのグローバル化
- 対応法令のグローバル化
- ビジネスアウトソーシングのリスク
- リスク顕在化のスピード
なお、文中意見に関する記述は筆者の私見であり、所属する法人などの公式見解ではないことを、あらかじめご了解いただきたい。