ITproの連載などを通して「モバイルクラウド」という言葉を広めた張本人と言える著者が、そのものズバリのテーマで1冊にまとめた本だ。

 本書では、もはや現実になりつつあるモバイルクラウドの流れについて、クラウド、モバイルのトレンド、仕事の仕方を変える、と幅広い切り口で紹介している。それぞれのエピソードは業界内で知られた内容が多く、本書は一般層をターゲットとしているようだ。

 そんな中、筆者の「スマイルカーブを制する者が、モバイルクラウドを制する」という指摘が目を引いた。スマイルカーブとは、台湾エイサーの会長を務めたスタン・シー氏が提唱した概念。製造業において、真ん中の組み立て製造の付加価値が最も低下し、両端の要素技術、サービス領域で付加価値が高くなるという考えだ。モバイルクラウドでも、最適なアプリのアグリゲーションなど、ユーザーに近いビジネスが生き残るとする。

モバイルクラウド

モバイルクラウド
八子 知礼 著
中経出版発行
1575円(税込)