本特集の第3回までは、ビジネス整合性を保証したうえで、ビジネスの俊敏性の劇的な向上を可能にするビジネス運用システムという観点のシステム経営のイノベーションについてであった。
しかしこの最終回では、ロナルド・G・ロス(以下、ロン・ロス)が第3世代のビジネス・アプリケーション・システムと呼ぶビジネス運用システムが生み出すイノベーションを、異なる観点から見ていこう。下の表は、第3世代が第1、第2世代とどう異なるかをまとめたものである。
特性 | 第1世代:データ処理システム | 第2世代:情報システム | 第3世代:ビジネス運用システム |
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基本的な目的 | 事務プロセスの自動化 | ビジネスプロセスのオンライン化と双方向化 | スマートなビジネスプロセスの構築 |
設計の中心 | マスターファイル | データベース | ルールブック |
トレーサビリティやロギングのレベル | 更新バッチ | 個別トランザクション | 個別の判断とビジネス運用上の決定で使用するビジネスルール |
運用の主要機能 | トランザクションファイル | クエリー | 引火点 |
ソース言語 | COBOL | SQL、HTML | 構造化された自然言語(例: RuleSpeak) |
このビジネス運用システムが備える主要な特徴には、特別なコンピュータ言語を必要としないというものがある。例えば「RuleSpeak」と呼ばれる構造化自然言語を用い、正確で業務用語を使っているビジネス側から、わかりやすいかたちで開発するのである。
また、ビジネス運用システムは、蓄積された実務的なスキルという意味でのビジネスノウハウを保持するので、スマートなシステムを実現するという意味でのイノベーションも生み出す。