2011年10月末、米国フロリダ州で開催されたBBC(Building Business Capability) 2011カンファレンスの壇上で、BABOK(ビジネスアナリシスの知識体系ガイド)を開発・発行するIIBA(International Institute of Business Analysis、関連書籍)のキャサリーン・バレットCEOは、IIBAからの新たなメッセージ「Changing Change」を打ち出した。これは「ビジネス組織の変革の方法を変革する(Changing the way organizations Change)」という意味であり、ビジネスアナリシスの目的が、ビジネスの変革を成功に導くための支援にあることを表明したものである。

 このメッセージは、筆者が開発リーダーのひとりとして参加し、改訂が進行中である次世代BABOKバージョン3においても、中核テーマとして扱われている。ビジネス変革を支援することが、IIBAおよびビジネスアナリシスの目的であることを明らかにしたものであるとも言える。

 また、IIBAとBBCカンファレンスを共同開催するビジネス・ルール・コミュニティの世界的権威であるロナルド・G・ロス(以下、ロン・ロス)も、こう問う。「21世紀のビジネス変革で、重要な役割を果たすのはビジネスアナリシスだ。あなたの組織はビジネスアナリシスの推進ができるだろうか。ビジネスアナリシスの推進者は何を知らなければならないのだろう。そして何ができなければならないのだろう」と。

叫ばれる「俊敏な企業の構築」

 日本は歴史上まれに見る長い不況の中にいる。筆者の周りにいる多くの方々も閉塞感にあふれていると主張してやまない。もちろん、日本にも優れた業績を上げ続けている企業が数多くあり、それは心強いことだが、GDP世界第2位の座を中国に明け渡したことは記憶に新しい。かつて世界最強の経営を誇った製造業が、長引く不振にあえいでいる。何が問題なのであろうか。

 日本のビジネスにも、いや日本のビジネスにこそ「変革=Changing Change」の実現が急務だと思えてならない。では、変革を達成するためには何が必要か。今までのやり方では、何が足りないのだろうか。

 BBC2011に続き、2012年に開催されたBBC2012のテーマは、「Building Agile Enterprise」(俊敏な企業を構築する)であった。IIBAとロン・ロス率いるビジネス・ルール・コミュニティは、必要な変革の方向性が「俊敏な企業の構築」にあり、そのためにビジネス・ルール・マネジメントを融合したビジネスアナリシスの実践が必要である、と強く訴えたのであった。IIBAとしては、言うまでもなくBABOKバージョン3改訂の目的の一つに、「ビジネス・ルール・マネジメントの融合」を置いている。

 「俊敏な企業の構築」が、なぜこれほど議論の焦点になっているのだろうか。そして、ビジネス・ルール・マネジメントを融合したビジネスアナリシスの方法は、どのようにして「俊敏な企業の構築」を可能にするのか。それについて解きほぐすことが、今回の特集の目的の一つである。