「中国でもインドでもなくベトナムで開発したい」。システム開発の委託先としてベトナムを“指名”するユーザー企業が増えている。こうしたニーズに応えるため、日本のIT企業もこぞって現地での開発体制の強化を急いでいる(表2)。

表2●ベトナムに自社のオフショア拠点を設けている主なIT企業の開発体制
表2●ベトナムに自社のオフショア拠点を設けている主なIT企業の開発体制
[画像のクリックで拡大表示]

 最も野心的なのが、ITベンチャーのバイタリフィだ。2008年末にホーチミンでの開発を本格化させた同社は、2012年12月時点で170人の技術者を抱える。ネットやスマホ用のアプリの開発受託が好調という。将来的には現地での事業展開も視野に入れており、2016年までにベトナム全体での開発体制を1000人規模にする目標だ。

 ベトナムのIT企業は通訳(コミュニケーター)を駆使することで、日本企業には日本語で接する。だが、ベトナムの技術者たちの中には、英語が得意な人が多い。米国で公表されたAndroidやiOSの最新仕様をいち早く取得できる強みを持つ。日本語ができる技術者なら、日本向けのスマホ用アプリの開発もこなせる。

 日本では、大手ネット系企業を中心に、スマホアプリの開発技術者の囲い込みが始まっている。一部企業が新卒社員に高額な報酬を提示するなど競争が過熱しており、新興や中堅中小のITベンチャーは優秀な人材を確保しにくくなっている。

 ベトナムに目を向ければ、英語が堪能で最新のスマホ用アプリ技術に精通する優秀な技術者が、低コストで大量に採用できる。バイタリフィなどのネット系IT企業は、この点に目を付けている。

写真2●NECベトナムの開発拠点の様子
写真2●NECベトナムの開発拠点の様子

 ネット系ベンチャーだけではない。NTTデータやNECなどの大手も、ベトナムでの陣容拡大を進めている(写真2)。NTTデータとNECは共に、2~3年後をめどに開発体制を現在の2倍に拡大させる目標だ。

 NTTデータの現地法人であるNTTデータベトナムは、物流業向けなどの業務パッケージソフトの開発を手掛ける。中国やインドに比べて人件費が6割程度というコスト競争力に加えて、英語が使え最新技術の習得に意欲的な点などを評価している。「NTTデータグループ全体で見て、中国に集中しすぎているオフショア開発比率を下げるためにも、実力をつけてきたベトナムのIT人材の活用は重要だ」(NTTデータベトナムの柳川正宏社長)。