「4000人のソフト開発技術者を3年後までに2.5倍の1万人に増やす」。ベトナム最大のIT企業、FPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長兼CEO(最高経営責任者)は宣言する。日中関係の悪化を機に、オフショア開発の発注が中国に集まるリスクを再認識する日本企業の動きに合わせて、「チャイナプラスワン」の第一候補として受注拡大を目指す。(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ)

日本におけるオフショア開発の発注先が中国に集中する現状をどう見ていますか。

ベトナム FPTコーポレーション 会長兼CEO(最高経営責任者) チュオン・ザー・ビン 氏
ベトナム FPTコーポレーション
会長兼CEO(最高経営責任者)
チュオン・ザー・ビン 氏

 私はシステム開発会社のFPTソフトウェアや通信会社のFPTテレコムなどを傘下に持つ、グループ社員数1万4000人の企業集団の経営者です。ですから、経営者の視点でお答えしてみます。

 どこの国でも、経営者の一番の関心事は、どうすれば自分の会社を継続的に発展させられるかだと思います。私が日本の大企業の経営者だとしましょう。(日中関係が)非常に複雑になる中で、安定した発展を続けるためには、商品やサービスの品質を維持するのはもちろん、コスト競争力に優れた生産・調達体制を安定的に確保することが欠かせません。

 そこにベトナム企業は役立てると思っています。ベトナムは親日的な国であり、日本とは良好かつ戦略的な関係を構築しています。ベトナムへの直接投資額を国別に見ると、ベトナムに投資している39カ国の中で日本からの割合が最大です。その金額は2012年1~8月で43億ドルに上ります。

 日越の協力関係は、特定の分野に限らずほぼ全ての領域に及んでいます。国家レベルでプロジェクトを協業してもいます。ざっと挙げるだけでも、高速鉄道や高速道路、ハノイ近郊に建設中の「ホアラック・ハイテクパーク」、ハノイ市やホーチミン市の交通問題の解決などがあります。