誰かに説明されるなり調べるなりしないと、なかなか気づかないものが多いが、iPadのiOSには便利なジェスチャ機能がいろいろと装備されている。まさにタッチ前提のOSだけあって、これらのジェスチャを使うと、特定のオブジェクトを指し示すことなくおおざっぱな手振りで、各種の機能を実行することができる。

 たとえば、3本指でのダブルタップでズーム、タップ&ホールドした指を上下に動かしてズーム倍率の変更、4本指での左右スワイプでタスク切り替え、5本指でグラブすることでホーム画面への遷移といった操作が可能だ。

Windows 8ではタッチ操作とマウス操作の共通性に配慮

 それに対してWindows 8には、こうした特定のジェスチャ機能は用意されていない。クラシックなデスクトップ環境ではもちろん、没入型と呼ばれる新しいModern UIの環境についても同様だ。

写真●Windows 8では画面左からのスワイプイン操作でタスクの切替やタスクの一覧表示ができる
写真●Windows 8では画面左からのスワイプイン操作でタスクの切替やタスクの一覧表示ができる
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 その代わりといってはなんだが、スクリーンの上下左右から画面に入ってくる対するのスワイプインには、各種の機能が割り当てられている。右からのスワイプインによるチャームの表示や、左からのスワイプインによるタスクスイッチなどがそうだ(写真)。

 このスワイプインをきちんとできるようにするという配慮からなのか、Windows 8搭載パソコンではスクリーンの上下左右にあるベゼルと呼ばれる額縁がけっこうな幅で確保されている。たとえ、将来、技術的にベゼルのほとんどないスクリーンが実現できるようになったとしても、Windows 8ではスワイプイン操作のためにあえてベゼルを用意しなければならない可能性もある。

 Windows 8がジェスチャを積極的に活用しようとしていないのは、やはりマウス操作との整合性が散漫なものになってしまうことを回避するためなのだろう。タッチ操作でできることはマウス操作でもでき、マウス操作でできることはキーボード操作でもできるようにしておくというのが、Windowsの“おもてなし”であり、それによってアクセシビリティが確保されているともいえる。逆に言うと、Windowsでは画面上で見えてないものに対する操作を実行するのは難しい。

 目の前に見えているオブジェクトだけが、操作の対象になるというWindowsの原則は、わかりやすいといえばわかりやすい。だが、タッチ操作の時代には便利とは背中合わせになっているようにも感じる。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
フリーランスライター
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei