●アンデルセンサービス 堀尾紀昭 執行役員システムサポート部長
●アンデルセンサービス 堀尾紀昭 執行役員システムサポート部長
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 「アンデルセン」や「リトルマーメイド」ブランドのベーカリーショップなどを展開するアンデルセングループ。同グループのCIO(最高情報責任者)相当職を務めているのは、シェアードサービス会社であるアンデルセンサービス(広島市)の堀尾紀昭執行役員システムサポート部長。営業事務部門や経営企画部門を経て、2004年からグループのIT(情報技術)の構築・運用を一貫して指揮している。

 堀尾執行役員がITシステムを構築・運用するに当たって強く意識しているのは、属人性の排除の徹底だという。それを象徴しているのが、ITベンダーとのつきあい方だ。

 一般に企業のIT部門は、開発や運用を任せるITベンダーとは同じ担当者と長期的なつきあいを求めることが多い。自社の経営課題をよく理解してもらうことで、適切な情報システムの提案を受けられるという考えがあるからだ。だが、堀尾執行役員はその逆を行く。「担当者をなるべく固定しないでほしい」とベンダー各社に要請しているのだ。

 その理由は「当社の仕組みを知っている人を増やしたいから」(堀尾執行役員)。1人のベテラン担当者に頼っていると便利な一方、その担当者次第という属人的な対応に陥るリスクがある。それよりも多くの担当者と交流し、様々な提案をもらった方が充実したIT環境を整備しやすいと堀尾執行役員は考える。また、経験が浅い担当者の方が、既存の枠組みに縛られない提案を出してくれる可能性にも期待しているという。

 属人性を排除し、できるだけ多くの担当者や部門が関われるようにするべきという堀尾執行役員の発想は、構築・運用するITシステムでも発揮されている。例えば、クレームの再発を防ぐ目的で活用しているCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムを2010年に構築した時も、「顧客対応部門だけでなく、生産現場など皆が確認しやすいシステムにすべきだ」という方針を打ち出して開発した。

 堀尾執行役員が構築に関わっていなかった従来のCRMシステムは、顧客対応部門の求めに応じて、IT部門の担当者1人が米マイクロソフトのデータベースソフト「アクセス」でゼロから開発したものだった。他部門との連携を考慮しておらず、顧客対応部門以外は閲覧できないという制約を抱えていたという。

 このためせっかく顧客の声を集めても、顧客対応部門以外にはその声がなかなか伝わりにくかったという。「ある工場で発生したミスが原因のクレーム情報が、他の工場には伝わらず、同じようなミスを起こしてしまうケースがあった」(堀尾執行役員)。しかもシステムを改修したくても、開発した担当者以外には分からない状態になっていた。

 このような課題を克服するため、ドリーム・アーツのウェブデータベース「ひびきSm@rtDB」を利用して、新しいCRMシステムを構築し直した。顧客対応部門だけでなく、工場などからも顧客の声をウェブ経由で閲覧できるシステムとした。これにより現在は工場の生産部門でも毎日確認するようになった。顧客対応部門と生産部門との定例会議でも、システムからの情報を使って意見交換するようになった。生産部門が事前に情報を確認して会議に臨んでいる効果で、「会議で話し合っている内容の質が以前よりも高まった」(堀尾執行役員)という。

Profile of CIO

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・中国新聞・日経コンピュータ・週刊少年ジャンプ
◆最近読んだおすすめの本
・橋本治氏の作品をよく読んでいます。
◆ストレス解消法
・自宅の居間にはノートパソコンが6台、タブレット端末が4台、ゲーム機も並んでいます。これらの端末を使って子供2人と遊んでいます。
・最近は上記の環境を反省し、公園にも出かけるようになりました。